インタビュー 下関市立しものせき水族館 館長「情報共有が必要」

 JAZAで理事や副会長を歴任し、現在は日本鯨類研究協議会の代表幹事を務める、下関市立しものせき水族館(海響館)の石橋敏章館長に、イルカの人工授精や繁殖について聞いた。

 -海きららが人工授精の出産に成功した。どう受け止めているか。
 繁殖に初めて取り組む施設で、ニーハは初産だった。大学や水族館など多方面と連携し、しっかりと情報収集をしていたのが印象的だ。スタッフが育児に向けて授乳トレーニングを積んでいたこと、ニーハが“子育て上手”な性格だったことも、成功した要因だと思う。

 -日本ではなぜ繁殖が進んでいないのか。
 これまで繁殖に後ろ向きだったという声もあるが、決してそうではない。育児や繁殖のためのプールを持っている施設が少なく、なかなか踏み切れなかった。追い込み漁で捕獲したイルカを多く導入していた時代は、繁殖のためにプールを複数つくるという考えが薄かった。資金や土地の問題で簡単に増設するわけにはいかず、今もそれを引きずっている。

 -今後、人工授精は増えていくのか。
 雄の個体を移動しなくていいというメリットがあるので、増えていくと思う。近年は精液の採取やホルモンの調査も問題なくできるようになった。成功例が増え技術が広まれば、数年後には普通にできるようになるのではないか。人工授精はアメリカが一番進んでおり、雄と雌の産み分けもできている。最終的には日本もそこを目指さないといけない。

 -海きららに期待することは何か。
 一つのプールで初産のイルカが成功した。そこで得たものを広めて、技術の底上げに寄与してほしい。長期飼育や繁殖のためには、水族館同士の情報共有と連携協力が必要だ。

「人工授精は今後増えていくと思う」と語る石橋館長=下関市立しものせき水族館

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