中日平田が開いた“新境地” 山崎武司氏「本塁打の少なさを気にする必要ない」

中日・平田良介【写真:荒川祐史】

アベレージヒッターとして飛躍、好結果を残せた要因は「ダイエット」

 中日の平田良介外野手にとって、昨季はプロ13年目にして最高のシーズンとなった。自己最多138試合に出場し、リーグ3位の打率.329、9本塁打、55打点。自身初のゴールデングラブ賞も獲得した。オフの契約更改交渉では、6000万円増の年俸1億8000万円でサイン。怪我なくシーズンを完走したことも大きかった。

 高校時代は通算70本塁打を放った大砲。プロ入り後、キャリアハイは2013年の15本塁打とその力を発揮できていないように見えたが、昨季はアベレージヒッターとして“開花”。打率と出塁率(.410)の高さから、シーズン途中からリードオフマンを務めるなど新境地を開いた。現役時代に通算403本塁打を放った強打者で、中日OBでもある野球解説者の山崎武司氏は「文句のない成績」と高く評価した上で「ホームランが少ないとかも気にする必要はない」と“エール”を送った。

 まず、なぜ平田は昨年、好成績を残せたのか。山崎氏は「ダイエット」を要因に挙げた。

「一番は彼が一昨年(膝を)怪我をしたこと。自分のいろんなもの、考えを変えられたことが彼の一番の成長じゃないかな。次に良かったのが、ダイエットしたこと。この2つじゃない? 技術的にはそんなに変わってないし、打ち方も変えたわけじゃない。やっぱり体のキレが全く違う。これは再三、平田には言ってたんだけど、『痩せろ』と。でも、言ってもオフに痩せられなかった。去年は、痩せたことによって膝の故障がなくなって、走れて、体のキレが出た。彼はポテンシャルを持っていたけど、いつも怪我して打率は.250そこそこだった。軽くしないと膝の負担が大きいということ。(一昨年)そういう怪我をしたから、野球に対する取り組みが変わったと言われてるからね。だから、平田は怪我をして一番良かったんじゃないのかな」

 そして、甲子園では1試合3本塁打、通算5本塁打を放つなど高校球界を代表する強打者として鳴り物入りで入団してきた13年前のドラ1は昨季、長距離砲としてではなく、アベレージヒッターとして結果を残した。プロ野球界でホームランバッターとして結果を残してきた山崎氏の目にはどう映ったのか。

現在は解説者などを務める山崎武司氏【写真:岩本健吾】

「こうやって自分の生き場所を見つけたのは非常にいいことだと思う」

「打率を稼ぐ選手というのは、ほぼ反対方向(への打撃)だよね。軽打。(平田は)2ストライクからのバッティングに関しては、かなり軽打でライトヒッティングしてる分、打率が上がった。基本的には、昔から反対方向に打つのが下手じゃなかったけど、このへんが大きいんじゃないかな。考え方とか、技術的なことで変わる選手がいっぱいいるってことだよね。平田にはそれが大きかった。

 みんなスラッガーでプロに入ってくる。高校でホームラン50本打ったとか、60本打ったとか。例えば、ソフトバンクの今宮だってそうでしょ。みんな超スラッガーとして入ってきて、プロにすごいやつが集まって戦う上で、自分はどうやって生きていこうか、というところで色々な方向づけをされる。(シーズン)30本打てる要素は多分にあった平田だけど、こうやって自分の生き場所を見つけたのは非常にいいことだと思う」

 その平田を1番で起用した中日のチーム方針についても、山崎氏は理にかなっていると見ている。

「1番での起用は、数字を見れば分かる。打点やホームランは少ないけど、打率、出塁率はいい。バッターにとって勲章の首位打者というのは、例えば新聞とかで(打撃成績一覧を)見ても一番上に名前がくるわけだから。ホームランは(一番上に)来ないからね(笑)。(打撃成績)30傑は打率で評価されている。そういう部分では数字が物語っている。出塁率がいいから1番にしてハマってくれた。いいことじゃないかな」

 昨季初めてゴールデングラブ賞に輝いたとはいえ、元々、守備力には定評のある選手。スピードも併せ持っている。能力を存分に発揮できる“ポジション”だと言えるかもしれない。

「欲を言えばホームランや打点をもうちょっと上げてほしいとも思うけど、1番としての役割は果たしたんじゃないかと思う。何も悪くないと思うね。だから、ホームランが少ないとかも気にする必要はない。打順についてはそもそも、1、2番はチャンスメーク、3、4番は(走者を)返すという役割があるけど、それは一回り目だけの話で、二回り目からは巡り合わせでいいところに回ってきたり、先頭バッターが2番バッターになることだってあるわけだから。でも、昨季の平田については、文句のない成績は出したなと思う」

 今季から与田剛監督がチームを率いる中日。平田がキーマンの一人となることに変わりはない。新監督はどのようにその能力を生かすことになるだろうか。(Full-Count編集部)

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