『チワワちゃん』 果たしてこれは映画? と思わせるテンポの速さ

(C)2019『チワワちゃん』製作委員会

 1994年に発表された岡崎京子の短編が原作。そもそも彼女の漫画は“映画的”だ。恐らく映画から影響を多く受けているのだろう。1年前に公開された行定勲監督作『リバーズ・エッジ』は、カット割りまでも原作に忠実だったが、とても懐かしい印象を覚えた。90年代に撮られた映画を観ているようだったから。それは90年代に書かれた原作漫画が、当時の映画の手法を取り入れた証左と言えまいか。実際本作の原作も、殺人事件が起きて、その証言が人によって食い違っていくという黒澤明の『羅生門』的な話だ。

 舞台は現代に置き換えられている。タイトルロールのチワワちゃんが東京湾でバラバラ遺体となって発見されるが、一緒に遊んだ仲間たちは誰も彼女の素性はおろか本名さえ知らなかった…。ここでは犯人捜しも、チワワがどんな女の子だったのかも重要ではない。もっと普遍的な人の生き死にや人間関係の本質、さらには青春の爆発力ともろさが証言によって浮かび上がる。

 監督は、91年生まれの二宮健。若い監督の手に掛かると、映画的な原作もこうなってしまうのか? 果たしてこれは映画なのか? と“おじさん”は思ってしまう。目まぐるしいカット割りやおびただしい光源のせいで、構図も画面設計も、光と影が物語に落とす前後のカットの相互作用も、見極められない。確かにアップの切り方は悪くないが、単にたくさん撮って一番いいものをつないだだけだろう…と。だが、考えてみると、ヒッチコックだって今観直すとテンポが遅く感じられるが公開当時は速すぎると批判されたわけだから、本作のテンポも近い将来“標準”になるのかもしれない。★★★☆☆(外山真也)

監督・脚本:二宮健

出演:門脇麦、成田凌、寛一郎、玉城ティナ、吉田志織、村上虹郎

1月18日(金)から全国公開

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