DeNA筒香「支援したい」 野球少年の健康守るため…提案された10のルール変更

野球未経験児童を対象とした野球体験会を開催したDeNA・筒香嘉智【写真:広尾晃】

堺ビッグボーイズが野球体験会&シンポジウム開催、OBの筒香も参加

 1月14日、大阪府堺市の少年野球チーム、堺ビッグボーイズは、野球未経験者対象の野球体験会「アグレシーボ」を開催した。OBであるDeNA筒香嘉智外野手は報道陣にメッセージを発信したが、イベント終了後、堺市内でシンポジウムも行われた。

 シンポジウムには、筒香のほか、慶友外科病院、整形外科部長・慶友スポーツ医学センター長の古島弘三医師、公益財団法人全日本軟式野球連盟(全軟連)の宗像豊巳専務理事、堺ビッグボーイズの瀬野竜之介代表が登壇した。

 古島医師は「スポーツ整形外科医からみた少年野球」と題し、スライドを使って投球数制限の重要性を訴えた。

 そもそも12歳未満(小学生)で1つの競技に専念すると怪我のリスクが高まるが、小学生は骨成熟が未熟であり、障害を受けやすい。小学生で障害を負うと、その後の競技生活にも深刻な影響を及ぼす。小学生の肘障害をいかに減らすかが重要課題だと訴えた。

 小中学生の主な投球肘障害は、上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(OCD)と、肘内側上顆下端裂離骨折(剥離骨折)の2つ。その発生のメカニズムから、治療までをレントゲン写真やMRI画像などで説明した。OCDの手術は、動画で紹介。膝の軟骨と骨を切り出して、肘の患部に埋め込むまでをリアルに紹介した。

 日本では、多くの野球少年が剥離骨折やOCDのリスクにさらされている。古島医師は昨年、ドミニカ共和国で224人の野球少年の肘の診断をしたが、内側障害(剥離骨折)は、18%(41人)、OCDは0%(0人)だった。これに対し、古島医師のもとを訪れる野球少年では、内側障害(剥離骨折)は34%、OCDは3%、さらにU12侍ジャパン選手は、内側障害(剥離骨折)は67%、OCDは20%にのぼった。

 この結果には、会場の関係者、メディアからも驚きの声が上がった。こうした現状を変えるためにも、球数制限は必要。古島医師は、指導者の考え方次第で、野球肘障害は予防できると強調した。

提案された10項目の「学童野球独自のルールの変更」

 全軟連の宗像専務理事は、少年軟式野球の現状について紹介。投手の7割が肘、肩をけがしているとし、次代には流れに沿った変化が必要と強調した。投球制限と指導者の育成の2つが最重要課題であり、ルール化をすべきと訴えた。

 さらに、野球だけでなく他のスポーツも経験すべきであり、少年野球も3か月程度のシーズンオフを設けるべきとした。宗像専務理事は、2月に学童野球の「球数制限」の導入を提案するとし、「少年軟式野球は、子供の権利を守ることができる指導者」が必要だと訴えた。

 古島医師、宗像専務理事は、「学童野球独自のルールの変更」として、以下の10項目を挙げる。

1.投球数規制70球、試合回6回
2.練習時間規制1日3時間(熱中症対策も含め)
3.試合数規制年間100試合以内
4.トーナメント制ではなくリーグ制の大会
5.塁間投捕間距離の改正(もっと短く、投手有利な条件へ 15m)
6.盗塁数規制
7.カウント1-1からの開始
8.お茶当番、応援の緩和
9.監督不要(サイン指示なし)
10.パスボールなし

 会場には、新潟県青少年や旧団体協議会、プロジェクトリーダーの島田修氏の姿もあり、新潟県高野連の「投球制限」導入に至る経緯を紹介した。発表後には質疑応答があり、筒香は「こうした野球界の動きを、選手としての立場から支援していきたい」と力強く語った。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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