<隠れた名盤> 来生たかお『Sparkle[+4]』 引き出しの多さに大器を感じる

来生たかお『Sparkle[+4]』

 来生たかおのLP18作が紙ジャケット仕様の高音質CDにて18年12月と19年1月に発売。ここでは、初の本人プロデュースとなった81年発表の6作目に触れてみたい(全作詞:来生えつこ、全作曲:来生たかお)。

 本編13曲中では、来生による切ないメロディーと優しい歌声、さらに松任谷正隆による気品ある編曲の『Goodbye Day』が印象的。『シルエット・ロマンス』『セカンド・ラブ』などヒット・ソングライターとしての彼のイメージにも合致する。

 ただ、通して聴くと他の作品も自由な作りで味わい深い。本編の最初と最後に収録された『Much more…』は、テーマ曲風で軽快な小品。その一方で、頭痛と恋人不在での二重苦をハードなポップスにまとめた『Sparking head』は強い歌声で、さらに酔いどれた気分を反映したように曲の途中でテンポが何度か変わる『Good luck my girl』も面白い。いずれも前述のヒット路線とは程遠いが、引き出しの多さからアーティストとしての大器をより強く感じた。

 ボーナスとしてタンゴ調の『とにかく、あした』など4曲を追加収録。本作から、人の魅力を引き出せるかどうかは自分の好奇心次第だと気づくはず。

(ユニバーサル・2315円+税)=臼井孝

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