半年で10万人以上が利用。ロボットアドバイザー「ドーナツ」が保険見直しの「面倒くさい」を1分で解決

保険は、年齢や仕事・生活の環境に応じて見直す必要があります。

しかし、これがなかなか面倒な作業。
「時間がある時にやろう」と先送りにしてしまう人も多いのではないでしょうか。

そんな時に便利なのがロボットアドバイザーの「ドーナツ」。

スマートフォンでいくつかの質問に答えると、自分や家族に必要な保険がわかり、FPが提示する保険に申し込んだり資料請求することもできます。

今回は、ドーナツの特徴と、提供元であるSasuke Financial Lab株式会社の社長、松井清隆氏へのインタビューをお届けします。

「ドーナツ」とは?

ドーナツは無料で使える保険・リスク診断サービスです。

7つの質問に答えていくとその回答をロボットアドバイザー(AI)が分析し、いまの自分に必要な保険と、おすすめの保険を提示してくれます。所要時間はたったの1分。

すでに加入している保険と照らし合わせれば、追加で加入した方が良い保険を絞り込むことができます。

その候補となるのが、FPがおすすめする保険商品です。この部分では、保険料や保障内容などを知ることができ、気に入った場合はそのまま申し込むことも可能。詳しい説明を聞きたい場合には電話でFPに相談することもできます。

ありそうでなかったこのサービスはどのように誕生したのでしょうか。

リリースから半年で10万人が利用。生命保険とITの高い親和性

——保険分野のIT活用では損害保険の選択や加入で事例が増えていますが、生命保険は珍しいですね。

松井氏そうですね。損害保険はニーズが顕在化しているため、手続きが簡略化できるITが活躍しやすく、相性が良いといえます。

ただ、実は生命保険とITも親和性が高く、「ドーナツ」もサービス開始から半年の間に10万人を超える人が利用してくれました。

「今の保険で良いのだろうか」「リスク対策できているだろうか」といった不安を手早く確認できる点、診断から保険加入までスマホで一気にできるという点が、今の世の中のニーズとマッチしたのではないかと思っています。

保険について知りたい、でも自分のタイミングで

——生命保険は営業担当者に相談して加入する対面形式が一般的です。その手間を省きたいと考える人が増えているのでしょうか?

松井氏必ずしもそうではないと思います。

実際、生命保険の加入は99%が対面販売です。多くの人は「保障内容について深く知りたい」「しっかり説明してほしい」と思っていると思います。一方で、営業の電話などを望んでいない人もいる。

ドーナツは、自分の都合の良いタイミングで診断できますので、そういった心理的な壁を超えることができます。

人だからこそ提供できる価値とITの利便性を融合

——ドーナツによって営業活動がITに置き換わるわけではないのですね。

松井氏置き換えではありません。むしろ、保険加入の際に重要な安心感や信頼性といった点では、人だからこそ提供できる価値が大きいと思っています。

ドーナツは加入者と人を結びつけたり、人が提供する価値とITの利便性を融合させることが大きな役割だと思っています。

保険の見直しへの大きな潜在的な需要

——それにしても半年で10万人が利用したという実績はめざましいですね。

松井氏ありがとうございます。2018年の4月24日にサービスを開始し、実際に利用した人たちのSNSなどから口コミが広がりました。メディアなどに取り上げられたことがきっかけで「数分でできるなら診断してみよう」と思った人も多いようです。

——生命保険の加入や保険の見直しは潜在的な需要が大きいのですね。

松井氏そう思います。自分に合う保険は、その時々のライフステージなどによって変わります。

加入してそのままにしている人は多いのですが、頭のどこかで「この保険で大丈夫なのかな」「もっと最適な組み合わせがあるのではないか」といった考えがあり、機会があるなら見直したいと思っている人は多いです。

「見直したい」と「面倒くさい」の間にある壁

——「見直したい」と「面倒くさい」の間にある壁を取り払ったわけですね。実際に診断してみることによって自分が抱えているリスクに気づく人も多そうですね。

松井氏そこは重要なポイントだと思います。日々の生活の中で健康や家計のリスクについて考えることはあまりないと思います。しかし、リスクをそのままにしておくと、万一の時に自分や家族が困ります。

死亡保障が薄ければ家族が経済的に苦しくなるかもしれませんし、身内にがんを患った人がいれば自分ががんになる可能性も考えた方が良いかもしれません。

簡単な診断によって、そういった気づきを提供できることもドーナツの特徴の1つです。

ドーナツの今後の課題

——利用者の属性は?

松井氏20代から40代前半くらいが中心で、女性を意識したインターフェイスにしたこともあり、男女別では女性の方が多いですね。ただし、これが完成形ではありません。

利用者アンケートや電話で相談いただいた方へのヒアリングを通じ、課題を把握しながら、サービス内容や使い勝手の面で常に改善をしていく予定です。

——どんな課題があるのですか?

松井氏1つは、サービス内で提案できる保険商品のラインナップの拡充です。スタート時は保険会社3社の商品でしたが、現在は6社まで増えています。直近の目標としては15社前後まで増やしたいと考えています。

もう1つは使い勝手に関することです。利用者へのヒアリングを通じて、分析結果をより深く知りたいという声があることがわかりました。

短時間で診断できるドーナツの特徴を生かしながら、分析結果や提案の細かな部分も提供していく改善を検討しています。

保険分野での「家計の最適化」を目指す

——会社のビジョンとして「家計の最適化」というキーワードを掲げています。ドーナツもその一翼を担うサービスとして誕生したのですか。

松井氏実はドーナツの前に、FPから家計改善のアドバイスが受けられる「ウェルスケア」というアプリを出しました。利用者の声を聞いていくと、家計改善に向けた実践的な方法を知りたい、実行できるツールがほしいという声が多かったのです。

家計改善のツールとして、保険の分野ではそのようなサービスが見当たりません。そこでドーナツを作ることにしました。

——保険は、万一の時の保障という点でも月々の保険料負担という点でも家計に与えるインパクトが大きいですよね。

松井氏そうですね。メディアなどの論調としては月々の保険料負担に焦点を当てることが多く、日本人は保険に入りすぎといわれます。しかし、保険でリスクヘッジした方が良い人がいるのも事実です。

保険加入のきっかけがない、保険を選ぶ時間がない、保険についてよくわからないといった理由で、リスクを放置しているケースが増えているように感じます。

無駄を省くのではなく、リスクへの対策として活用して欲しい

——目先の出費のみにとらわれてはいけないということですね。

松井氏もちろん無駄な保険は解約した方が良いです。しかし、全世代共通で保険が無駄なわけではありません。大黒柱に万一のことがあった時に、経済的に困るかもしれない人はたくさんいます。そのリスクをしっかり対策する大切さを多くの人に知ってほしいですね。

——若年層が保険と遠ざかっている理由はどこにあるのでしょうか。

松井氏保険と接する機会が減ったことが原因の1つだと思います。

例えば、以前は保険のセールスレディが職場を回って営業していました。しかし、今は会社やビルのセキュリティが強化されているため職域営業が減っています。そういった接点の減少を補うという点でも、ドーナツのようなサービスを通じて保険について考える機会を増やしたいと思っています。

——手軽にリスク診断することがきっかけとなり家計全般を見直そうと考える人も増えるかもしれませんね。

松井氏そうなると嬉しいですね。我々は家計の最適化に貢献することを重要視していますし、一般家庭においても家計は生活のベースになっています。

すぐに使えるリスク診断のツールとして、また、保険や家計について知りたいことがある時に、金融知識を持つ人とコンタクトを取るつなぎ役として、より多くの人にドーナツを活用してほしいと思っています。

[(https://i-donuts.com/)
ロボット保険アドバイザー「ドーナツ」

インタビュー・ライティング 伊達直太

雑誌、書籍の編集を経て、2001年よりフリーランスとして独立。
編集、執筆を行う。また、FP技能士として保険、証券等の広告物制作や、経営者インタビュー、社内ツールの制作を行う。

・リンク先:DRIVING NARCISSUS

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