日本モータースポーツ界の盛り上がりを期待 「芽吹き前の種子」を表す「い年」に思う

新生スープラの復活を発表するトヨタの豊田章男社長。後方には歴代のスープラの写真が並ぶ(C)トヨタ

 2019年となった。冬に注目を集めるスポーツといえば、ラグビーやサッカーが挙げられるだろう。高校生による大会は盛況の裡に終了し、現在はサッカーの日本代表がアラブ首長国連邦(UAE)で開催中のアジア・カップを戦っている。

 ところで、日本のサッカーほどこの四半世紀で変貌した競技はない。画期となったのが1993年。Jリーグが開幕したことだった。まず、多くの有名外国人選手が参加したことでレベルが引き上げられた。その後、海外クラブを目指す日本人選手が現れ、現在では多くの日本人選手が海外クラブに引き抜かれるまでになっている。それに伴って、Jリーグの知名度や魅力も上がり、巨額の放映権契約を結ぶコンテンツへと成長している。

 これは94年に、当時の世界最高峰とされていたイタリア1部リーグ、通称「セリエA」へ移籍した“キング・カズ”三浦知良の後を追うように海外クラブに活躍の場を求めた日本人選手が活躍することによって、日本人選手の実力と価値を高めてきた結果だと言える。実力に加えて、それが広く認知されなければ、見合った価値は提供されないからだ。

 話をモータースポーツに戻そう。19年は、1台の市販車に多くの注目が集まりそうだ。それは、1月14日の米・デトロイトで17年ぶりの復活が発表されたあるスポーツカーだ。トヨタ・スープラ。正式名称は「GR Supra」だ。日本ではかつてツーリングカーレースのグループAやスーパーGTに参戦していたスープラ。その名が海外で広く知られるようになったのは、残念ながら国内レースでの活躍ではない。01年に公開され、その後シリーズ化された人気映画「ワイルド・スピード」で、主人公が運転したのだ。また、この映画シリーズで登場した日本車は海外においてプレミア価格で取引されるほどに人気となった。

 そのスープラが今回、満を持して「GR Supra」として復活した。「ワイルド・スピード」の影響を受けて、日本の自動車メーカーたちも扱う車の海外における知名度を高める重要性を認識しつつある。その一つとして、積極的に海外レースへの参戦を開始している。新生スープラは、アメリカのモータースポーツで一番の人気を誇る「NASCAR」シリーズに参戦する。一方、一足先にNSXを復活させたホンダも、すでに海外で広く浸透しているGT3クラスにNSXを投入。今年も進化したモデルを登場させる。日産もGT―RをGT3クラスに継続投入している。

 今年のえとは十二支最後にあたる「亥」で、新たな芽吹きを前にした種子のような状態にあるとされる。高性能のスポーツカーは自動車メーカーにとって、自社のアイコンとのいえる存在だ。日本メーカーのスポーツカーたちが海外カテゴリーで切磋琢磨(せっさたくま)することで、結果的に日本車のブランド価値や日本人ドライバーたちの実力を高めていく―。今年がそんな盛り上がる年となることを期待したいものだ。(モータースポーツジャーナリスト・田口浩次)

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