時短・簡単・おいしい山ごはんが作れる!? 話題の『ポリ袋レシピ』を登山で試してみた! 山で食べるごはんはおいしさ2倍。次は何を作ろうかと考えるのも楽しみの1つです。そんな登山の醍醐味である「山ごはん」ですが、調理や片づけが下界のようにはいかず、ちょっと面倒なこともありますよね。そんなときに発見したのが、巷で話題の『ポリ袋レシピ』。不便な環境でも、時短・簡単・おいしく調理ができるらしいのです。これは登山にもぴったりなのでは!? ということで、実際に山で試してみることに。ポリ袋での山ごはん作りは、果たして上手くいくのでしょうか!?

山ごはんにもぴったり! 人気の『ポリ袋レシピ』が超便利

登山のとき、楽しみにしている人も多い「山ごはん」。絶景の中で作る料理は、特別感がありワクワクしますよね。一方で、調理や片づけが面倒だな~と思ったことはありませんか? 実は、そんなあなたにおすすめのレシピがあるんです!

ごはんも炊ける!? 『ポリ袋レシピ』

『ポリ袋レシピ』は、その名の通りポリ袋を使ったレシピ。料理家・川平秀一氏がプロの真空調理を家庭向けにアレンジした調理法です。

2012年には著書「ポリ袋レシピ」が出版され、一躍話題に。“揚げない唐揚げ”や“ポークの香草パン粉添え”など、こんなものまで作れるの!?というレシピが並んでいます。

その方法は、ポリ袋に材料と調味料を入れて湯煎するだけ。炊飯からおかず作りまで、誰にでもできる手軽さが人気です。

『ポリ袋レシピ』のココがすごい!

そしてポリ袋レシピには、こんなにメリットがあるんです。

①袋に入れて湯煎するだけなので超簡単
②油を使わず健康的
③袋の中で調理を完結するので、旨味や栄養素を逃しにくい
④いつもより少ない調味料でも味が浸みやすい
⑤1つの鍋で複数の調理が同時にできて時短になる
⑥ポリ袋の真空状態により煮崩れしにくい
⑦ポリ袋のまま冷凍保存ができる
⑧鍋や食器を汚さず、後片付けが楽ちん
⑨災害時の調理法としても役立つ
⑩ポリ袋は値段が手頃

いかがでしょう。登山のときに嬉しいポイントもたくさん見受けられますよね。山ごはんでも『ポリ袋レシピ』が活躍の予感です。

ただし、どのポリ袋でもいい訳じゃない!

ポリ袋といえば、スーパーなどに備え付けられている半透明の袋ですが、『ポリ袋レシピ』で使用する袋は耐熱性が求められます。耐熱温度が低いポリ袋やジップ式のフリーザバッグ、透明のビニール袋は、熱で溶けてしまう可能性があるので注意が必要。耐熱温度が100度以上のポリエチレン袋を使いましょう。

袋のラップ「アイラップ」がおすすめ!

数あるポリ袋の中でも、『ポリ袋レシピ』におすすめの袋があるんです。それがこちらの「アイラップ」。

「アイラップ」は耐熱温度120℃を想定して作られており、熱湯に入れて調理が可能。また、冷凍・冷蔵庫での食品や料理の保存から、電子レンジでの解凍まで使えてしまうんです。

パッケージに“袋のラップ”とあるように、ラップのような使い方ができるんですね。さらに両サイドにマチが付いているので、色々な食材が入れやすいのもポイントです。

「アイラップ」 を作っている<岩谷マテリアル株式会社>は、登山者にお馴染みの<イワタニ・プリムス>と同じくイワタニグループの1つ。なんだか頼れる存在の予感がビシビシします。その実用性はSNS上でも高評価。

「アイラップ」はどこで手に入る?

公式twitterによると、「アイラップ」は全国区商品。しかし、地域によっては馴染みがないところもあるようです。

今回、編集部員が東京都23区内で探したところ、スーパーやドラッグストアを回り6件目でやっと「アイラップ」に出会うことができました。身近で見かけない場合は、ECサイトでも手に入ります。

このあと、編集部員が「ポリ袋」を使って山ごはん作りにチャレンジ!

本当に簡単に美味しくできる? 『ポリ袋レシピ』を山で試してみた!

登山でも『ポリ袋レシピ』が活用できるかどうかを実証すべく、「アイラップ」を使って、山ごはんの定番・カレーライスを作ってみることにしました。果たして、手軽に美味しい山ごはんが食べられるのでしょうか!?

準備するものは5つだけ!

ごはんを炊くために必要なのは、「米」「水」「ポリ袋」だけ。カレーの材料は、家で作るのとなんら変わりません。具材の種類や量はお好みで。今回は以下の分量で試してみました。

・アイラップ(ポリ袋):2枚(炊飯用/カレー用)
・米(無洗米):1合(180g)
・水:260㏄(炊飯用180cc/カレー用80㏄)
・具材:適量(たまねぎ・にんじん・じゃがいも・豚肉)
・カレー粉:適量

【ポイント】
米は洗わなくても30分ほど浸水しておけばぬか臭さはぬけるよう。今回は時短のために、無洗米を使いました。

家での下準備&持ち運びは楽ちん!

家を出る前に、米1合をポリ袋へ。切った具材は、カレー粉を入れて馴染ませてあります。

クッカーにすっぽり収めて、いざ山へ! 手間になるような下準備は特にありませんでした。

超簡単!? ポリ袋で炊飯&カレー作りスタート!

米のポリ袋に水180ccを入れます。

空気を抜いて、袋の口を縛ります。

【ポイント】
水を張った鍋に袋をつけて、水圧で空気を抜くのが◎。熱で水蒸気が膨張した際に破裂するのを防ぐため、袋を縛るときは、口をねじって上の方で。

カレーのポリ袋にも水80㏄を入れます。

米と同様に、空気を抜いて口を縛ります。

鍋に水(分量外)を入れて、湯を沸かします。

【ポイント】
災害時などで水の確保が難しいときは、雨水などでもよいそうです。

沸騰したら、米の袋を投入。

後は、湯がフツフツしているくらいの弱火で30~40分程度煮込むだけ!

米を煮込んで10分程したところで、カレーも投入。

このあたりから想定外のことが…

米が思いのほか膨らんできていたため、カレーが全部浸らない…。「カレーだけ後でまた温めればいいか!」とひとまずこの状態で加熱。

煮込み始めて30分ほど経過。押してみるとふっくらとして、すっかりごはんらしい様相に。だいぶ幅をとっています。このクッカーで米1合は多かったかもしれません。

こうしてポリ袋でごはんが炊けました。 10分ほど蒸らすと、さらに美味しくなるそう。鍋が広くなったところで、カレーを引き続き煮込みます。このあと大ピンチに陥るとは思ってもいませんでした…

ここで事件発生の大ピンチ!

「えっ、お湯の色がおかしい!」カレーの袋が破れているではありませんか…。

原因は分かっていました。お腹がペコペコのところにごはんが炊けたものだから、はやる気持ちを抑えきれず火加減を強くしてしまったのです。鍋底の高温により、さすがのアイラップも破損。

【ポイント】
高温になる鍋底に触れると、ポリ袋が破損する恐れがあるので、鍋底にシリコン製の落し蓋を敷いておいたり、鍋の上に置いた箸にポリ袋を吊るすなどで接触防止ができます。

予備のアイラップを持ってきていたので、上から重ねることで一命をとりとめました。“自分の尻拭いは自分でする”という姿をアイラップが見せてくれたのでした。

カレーが溢れ出てしまった湯は、ナルゲンに入れてお持ち帰り。そのまま入れるとナルゲンにカレーの臭いが移ってしまいそうですが、アイラップ越しなら安心です。ピンチの時にもアイラップは強い味方。

気を取り直して再度湯を沸かして加熱し、カレーもなんとか出来上がりました。「レトルトを湯煎するのと変わらないのでは?」と思うかもしれませんが、ゴロゴロとした具材たっぷりのカレーはレトルトでは叶いません。

実食! 気になる出来栄えは?

まずはごはんを味見。食べてみると、芯が残らずきちんと炊けています。しかし、柔らかいのになんだかパサパサ…。カレーをかけたら気にならないかも!?

カレーは美味しくできました。ただ、にんじんとじゃがいもがまだ硬い…。途中で破れたことでポリ袋の中の空気が十分に抜けていなかったことが考えらえます。具材のサイズをもっと小さくしたり、煮込む時間を長くすることでも解決できそうです。

写真映えは望めませんが、小さいクッカーにポリ袋ごとごはんを置いて、カレーをかければ完成!

カレーと一緒に食べるとごはんのパサパサ感はだいぶマシになりますが、理想のふっくらごはんへの道はまだ遠そうです。みなさん、1回目で上手にできるものなのでしょうか。

【炊飯の失敗要因は?】
考えられるのは以下の点。

・袋に入れる水の量が少なかった
・袋の密封が不十分だった
・湯の温度が低かった
・カレーを入れたので途中で湯の温度が下がった
・普段は山ごはんを作らない編集部員Oがぶっつけ本番で作ってしまった

確かにポリ袋で手軽に山ごはんを作ることができました。しかしながら、ふっくら美味しいごはんを炊くには、コツを掴むまで「火加減」「水分量」「おかずとの同時調理」など様々な方法で試してみる必要がありそうです。また、クッカーのサイズやバーナーの種類でも出来上がりに差が生じるかもしれません。

クッカーが汚れないのは、かなり嬉しい!

ポリ袋での炊飯は不完全燃焼となりましたが、カレーがおいしかったのが救いです。そして、食べ終わったら、袋を持ち帰るだけでOK!

クッカーにカレーがこびりつかないのは本当にありがたいところ。油汚れはただでさえ落とすのが大変です。山では洗えないので持参したペーパーなどで拭き取ることになりますが、非常に面倒ですよね。そんなときは、アイラップの出番ですよ!

【登山】ポリ袋レシピのデメリットは?

登山のときにポリ袋で山ごはんを作ることのデメリットを挙げるならば、炊飯にやや時間がかかること。アルファ米ならお湯を入れて15分、クッカーで炊飯すると15~20分。ポリ袋では30~40分必要なので、その分ガスの消費も増えてしまいそうです。

とはいえ、ポリ袋さえあれば特別な道具は必要なく、持ち運びや後片付けの負担もなし。荷物の軽量化にも◎。同時調理に成功すれば時短にもなるので、一長一短。「面倒くさがり屋だけど、レトルトの山ごはんだと味気ない」そんな人におすすめの調理法ではないでしょうか。

山道具にも変身!「ポリ袋」は登山でも万能

家庭の夕食や山ごはん、災害時の食事まで、様々なシーンで役立つ『ポリ袋レシピ』。今回の炊飯は改善の余地がありますが、その手軽さは確か。そして、調理器具にもなるポリ袋の汎用性の高さに感動せざるを得ません。ぜひみなさんも、山ごはんで『ポリ袋レシピ』を活用してみてはいかがでしょう。まずは家での実践をおすすめします(笑)。

© 株式会社スペースキー