厚木基地を抱える綾瀬市の基地対策協議会が19日、基地問題を考える講演会を市役所(同市早川)で開き、住民ら約140人が参加した。同基地所属の米軍空母艦載機が昨年3月、山口県岩国市の岩国基地に移駐を完了した大きな節目を迎え、移駐に至るまでの経緯や今後の課題について専門家が解説した。
講師を務めたのは座間市出身で愛媛大学准教授の朝井志歩さん。1982年、周辺人口が過密な厚木基地で空母艦載機による夜間連続離着陸訓練がスタート、騒音問題が激化したのを契機に移転検討が始まった。三宅島、硫黄島、岩国基地へと計画が浮上する中、反対運動や住民投票が実施された経過を紹介した。
岩国市では2006年、空母艦載機受け入れの賛否を問う住民投票が実施された結果、87%が反対したにもかかわらず、移駐が実現した背景について朝井さんは「国から交付される基地関連財源で地域経済が発展、生活が豊かになり、受容する意識が醸成されていった」などと分析した。
今年に入り、恒久的訓練施設の候補地だった鹿児島県西之表市の馬毛島用地で政府と地権者の売買交渉が進展したとの報道にも触れ、「現地では自然保護や入会権の問題で裁判が起きている。地元の市長、議会も反対している。国の想定通り進むか、危惧される」との見通しを示した。
国の基地騒音対策の構造的問題点として(1)被害者人口が減少すれば問題が解決したと見なす政策方針(2)「アメ」と「ムチ」と言われる地域振興策や補助金・交付金による被害の受け入れ誘導(3)意思決定過程の閉鎖性-を挙げた。