両陛下、戦没船員を慰霊 横須賀・観音崎で献花

 天皇、皇后両陛下は21日、神奈川県立観音崎公園(横須賀市鴨居)を訪ね、第2次世界大戦で犠牲になった民間船員ら約6万人を奉安している「戦没船員の碑」に供花された。

 同日から25日まで葉山御用邸(葉山町)での静養前に立ち寄られた。両陛下は遺族らの出迎えを受けた後、碑前の献花台に白菊の花束を手向け、深く拝礼した。

 大戦の犠牲者への慰霊は4月30日に退位する陛下が在位中、最も心を砕いてきた務めの一つ。顕彰会によると、両陛下が公園を訪問したのは、皇太子時代の第1回追悼式(1971年)に出席以来、8回目を数えた。

 公園到着後、陛下は皇后さまとともに歩を進め、出迎えた一人一人に言葉を掛けられた。1943年11月に貨物船の機関長だった父を亡くした遺族代表の後藤美津子さん(86)=横浜市泉区=には、皇后陛下が「どなたが亡くなられましたか」と尋ねた。後藤さんが「父です」と答えると、2人で深々と頭を下げ、「ご苦労なさいましたね。お体を大切になさってください」と声を掛けられた。

 後藤さんは「退位前のお忙しい時期にもかかわらず、足を運んでいただき、御(み)心をお寄せいただき、本当にありがたく思っています」と感謝の言葉を述べ、妹の今田小夜子さん(78)=埼玉県川口市=は父の写真を持って列席し、「皇后さまが足を止めて一礼してくださった。心から戦没者のことを思ってくださっていると感じました」と語った。

 43年4月に旅客船の機関士だった父を亡くした小浜富子さん(76)=横須賀市桜が丘=は「退位されたらゆっくり過ごしていただきたいと思う」と気遣った。

慰霊碑に供花される天皇、皇后両陛下=横須賀市の観音崎公園(代表撮影)

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