弱気も泣き言もよし

 後になって、それをイメージトレーニングと呼ぶのを知った。三十何年も前の高校生の頃、先生に教わった「受験の心得」を今も覚えている。「いいか、希望校に受かって、胸を張って大学生活を送る自分を想像するんだ」▲成功や勝利のイメージを繰り返し頭に浮かべると、やる気が出るし、頭も働く。先生がそう言いたいのは分かっていても、どこか気後れしていた。まるで成績は振るわないのに、胸を張る自分なんて想像できないな、と▲自信のない同憂の君がいたら、少しばかり参考になるといい。数年前、米シカゴ大の研究チームがある実験をした。大学生80人余りを二つのグループに分け、数学の試験を2回やったが、2回目の直前、片方のグループに「今の心境」を作文に書かせてみた。すると…▲そちらの方は1回目よりも成績がよく、とりわけ「怖い」「間違えそう」と不安をつづった人の向上が目立ったという▲つらかったことを文章にして心の傷を癒やす。そういう心理療法があるらしいが、似たような効果を「試験前の作文」はもたらすと、研究チームは推測した▲大学入試センター試験が終了したが、2次試験も含めて入試シーズンはまだ続く。成功のイメージを味方にするもよし。人によっては、弱音や泣き言を“お供”にするのも、きっとよし。(徹)

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