「もう少し大きなパックが欲しい!」 優秀な30ℓバックパック・7モデル徹底レビュー  低山ハイクで背負うバックパック。街でも兼用できるいわゆるデイパックだと大きさは20ℓ前後です。でもストーブを持つようになるとクッカーも必要だし、冬は防寒着がかさばってその大きさでは荷物が入りきらなくなってしまいます。そこでオススメなのがちょっと大きめ30ℓ前後のパックです。こだわりを感じるつくりのパックを集めてレビューしてみました。

デイハイクには、容量30ℓのバックパックがオススメです!

ハイク初心者の頃は、持っていくものといえばランチ、行動食、水筒、レインウエアくらい。既にその時持っている20ℓ前後のデイパックで事足りていたと思います。でも、ハイク歴を重ねる程に、やりたい事が増えていく…そんな経験はありませんか?

山で見かけたハイカーが使っていたストーブでお湯を沸かしたり料理をしたい! そうなるとクッカーが必要です。また、暖かい季節にしか行かなかった山も、寒い季節の方が眺望がよいことを知って冬の低山にも登るようになれば、防寒着も持つでしょう。さらに、もしものための小道具もあった方が安心だとわかり・・・と、そうこうしているうちに当初のデイパックでは少し小さいことに気が付くのではないでしょうか。

そこで今回、ちょっと大きめの30ℓのパックを集めて、実際の装備を収納。その使用感をテストしてみました。収納した道具は筆者が寒い季節、秋~冬~春先までに持っていくものです。山小屋泊でも、ほとんど同じなので、山小屋泊をしたい方にも参考になると思います。

装備は

・ランチ、行動食
・水筒
・レインウエア
・クッカーとストーブ
・2ℓのソフトボトル
・コンパクトテーブル
・ソフトシート
・エマージェンシーシート
・パックカバー
・軽アイゼン
・ヘッドライト
・中綿ジャケット
・薬やテーピングテープ
・温泉に立ち寄りたいので着替え
・手ぬぐいやタオル
・ハイク帰りに履きたいリカバリーサンダル

です。着替えやサンダル等、不要な方もいると思いますが、それはパックの余裕分と考えてください!

それではレビュースタートです!!

①パタゴニア ナイン・トレイルズ・パック 28L

ショルダーベルトのパッドが秀逸! 荷物が軽く感じる

「バックパックは、バックパック専門メーカーのモノに限る」、そう言われることがあります。このパックはアパレルメーカーのパタゴニアのものですが、とてもよく考えられています。特にショルダーベルトのパッドの適度な硬さが荷物の重さを軽く感じさせてくれ、体のラインに沿ったカーブは、動きやすさを提供してくれます。また多めの荷物もスッキリと収めてくれ、パッキングが苦手なビギナーでも凸凹のパックにならないでしょう。パック専門でなくても、よいものはよい!

ストレッチパネルのポケットが便利

フロントとサイドにはストレッチパネルのポケットを装備。水筒、テーブルを左右のポケットに、ソフトシート、エマージェンシーシート、サンダルをフロントポケットに収納してみました。両サイドのコンプレッションストラップが荷物の多少に対応してくれ、ポケットにはマチも備わっているので、厚みのあるサンダルも収納できます。

動きやすいバックパネル

背中側のバックパネルはモノメッシュと呼ばれる素材で、汗の蓄積を防ぎムレを抑制してくれるもの。今回は実際にハイクをしていないので、ムレの無さまではわかりませんでした。パック内の背中側のポケットに水を入れたソフトボトルを収納したことも手伝って、柔らかめのパネルですが荷物がブレるような柔さはありません。むしろ背中にガチッとホールドされる感じがなく、歩きやすいです。

ビギナーこそ使いやすい、U字型開口部

このパックの一番よいところは、このU字型に開く開口部です。このようにパカッとフロントパネルが開くパックをパネルローディング型と呼びますが、いわゆる筒状のパックのトップローディング型に比べて、圧倒的に収納物の出し入れが簡単です。しかも美しく収納できます。デイパックから買い替えた方でも、違和感なく使え、「あれ、どこいった!?」と荷物を探さなくて済む機能です。

細かい気遣いがうれしい、ジップポケット装備

パネルローディング型のパックには雨蓋と呼ばれるパック上部のカバーを装備していないので、小物収納に困ることがあります。ですが、このパックにはフロントパネルにジップポケットが備わっているので、財布やヘッドライトを入れておけます。このパック、スキのない使い勝手のよさが気に入りました。

価格:¥20,000
容量:28ℓ
重量:1,000g
カラー:クラシックレド、フォージグレー、バイキングブルー
サイズ:S/M、L/XL

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②マウンテンハードウェア スクランブラー30 アウトドライ

軽さ+防水で、高所登山にも対応するタフなパック

高所登山で使用する、いわゆるアタックザックと呼ばれるパックのようなシンプルなモデルです。メインコンパートメントと雨蓋は防水構造を採用しているので、雨や雪に降られても収納したものが濡れる心配がほとんどないのが有難いです。
ショルダー&ウエストベルトは、重量778gという軽さを実現するために、簡略化されたもの。しかしウルトラライト仕様のパック同様に背中上部にパックを載せるように背負えば、問題ありません。むしろ軽さを生かして下りは走り出したくなります。

両サイドにはポケットを備え、テーブル、水筒を収納できました。またフロントパネルにはトレッキングポールやピッケルを装着できるループを装備。ソフトシートやサンダルを収納するフロントポケットがないのでメインコンパートメントに収納した結果、ちょっとパツンパツンな感じになってしまいました・・・。

背中側のバックパネルには、波形に成型したパネルフレームを内蔵。背中のラインに自然に沿う機能があり加重を分散してくれ、動きやすさにも一役買っています。ショルダーベルトには動きやすさを考慮した薄めのパッド入り。このパックの容量は30ℓとされていますが、今回紹介している他のパックと比べると少し小さめ。収納した荷物のうちサンダルや着替えを減らして背負ったら快適さがぐんと上がったので、詰め込みすぎはバランスが悪くなりがちなので注意したいです。

ハイドレーションパックやソフトボトルを収納するスリーブは、メインコンパートメントとバックパネルの間にあります。ハイドレーションチューブを雨蓋の下から出すための仕様ですが、調理や湯沸かしの際にソフトボトルをメインコンパートメントから取り出すよりもアクセスが楽です。またメイン開口部の赤いパイピングも、デザインがかわいい!

雨蓋には小物収納のためのジップポケットを装備。容量の割に開口部がちょっと狭いのは、中身を取り出す際に脱落させないためや、雨や雪で極力濡らさない仕様に思えます。ハードなクライミングにも耐え、活用できるようにすると、いろいろな部分がそぎ落とされるのだろうと思わせるパックです。ウルトラライトハイキング的に、装備を削り、軽い装備で長い距離を歩ける経験値を持った人にオススメです。

③モンベル チャチャパック30

中型パックのような背負い心地

容量は30ℓですが、腰を包み込むようなしっかりとしたウエストベルトを装備。バックパネルには体のラインに合わせてカーブを調節できるフレームを内蔵。背負い心地は50ℓ前後の中型パックのようなしっかりとしたものです。腰と肩の両方に加重が分散され、定番として人気を得ているのも納得のバックパックらしいバックパックといえます。

本体フロントに大きなポケット、フロントポケットと本体の間にもポケットを備え、さらに両サイド、ウエスト、雨蓋にもポケットがあり、30ℓパックながら、多くの装備を余裕で収納できるパックです。今回の多めの荷物を収納しても、まだまだ余裕がありました。

バックパネルは立体フォームの上に、ナイロンメッシュを配し、安定感と通気性を両立しています。ショルダーベルトのパッドは通気性を考慮した穴が開けられ、ウェストベルトは腰骨を包むように上下にベルトが渡り、荷物が多く重くなってもホールドしてくれます。またベルトをしっかりしめても痛みが出ないつくりです。

サイドポケットはボトルの落下を防ぐストレッチループを備え、しかもパックを背負ったままでもボトルを取り出しやすいように体側に斜めに配されています。これ、かなり便利です。またフロント大型ポケットの下部にジッパーが配され、そこからもメインコンパートメントにアクセスして荷物を出し入れできます。

本体下部には専用のバックパックカバーを装備しています。最近では小型、中型パックにカバーが装備されているモデルが多くなっていますが、ポケットの多さ等も含めて、日本のブランドらしく、細かな配慮、使いやすさが満載です。

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④グレゴリー スタウト30

やっぱりグレゴリーっていいね!

荷物を詰め込んで、調節可能な背面長を合わせ、分厚めのベルト類を締め込んで・・・なんだか大型パックのような堅牢さだなと思いながら歩き出してみて、すぐに感じたこと。「あれ、軽い!」。
本体重量は1,060gなので、今回紹介しているパックの中ではちょうど真ん中。最近は山道具の多くがかなり軽くコンパクトになったので、グレゴリーの大型パックを背負う機会がなくなっていましたが、30ℓのパックでこの背負い心地、体へのフィットは、やっぱりグレゴリーっていいね! と感心しきりです。

撮影:PONCHO
フロントパネルにはストレッチメッシュポケットを装備。マチがないので、エマージェンシーシートとソフトシートしか入りませんでしたが、ジャケット単体も入ります。ウエストベルトポケットは大きめで、行動食や小型カメラも収納可。サイドポケットも使いやすく、水筒も収納・取り出しがしやすい位置にあります。

小型パックでありながら、背面長を調節できます。背負う人の体とバックパックのサイズがぴったりフィットすることで、腰と肩に加重を分散してくれ、実際の重さよりも軽く背負え、足取りも軽くなります。さらにこのモデルはしっかりとしたパッドが配されたショルダーベルトとウエストベルトを装備。ズレ、ブレ、ヨレがなく、快適そのものです。

雨蓋のポケットはコの字にパカッと開き、アクセスがとってもラクです。取り出したいものが一目瞭然。こういうストレスのない細かなつくりって、案外あるようでないのでうれしい限りです。ただ容量がかなりあって、なんでもかんでも収納してしまうとパック上部が重くなってフラつきの原因になるので注意が必要。

フロントパネルのポケット内部にバックパックカバーを標準装備。しかもグレゴリーのロゴの入った、しっかりしたもの。登山をこれから始めるという方はもちろん、ベテランハイカーも、このパックを手に入れたら、この先10年、存分に快適なハイクが楽しめると確信します。

⑤パーゴワークス バディ33

山にすぐに出掛けたくなるパック

このパックに荷物を詰め込みながら「ここはこんな仕様なのか」、「へぇ、ここにはこんな工夫があるのね」、「あれ、なんか普通と逆だけどこれも便利だな」と思い、位置を調節できるウエストベルトを最適化し、背負ってトップスタビライザーを引いてみてびっくり。「なんだ、このかっちり感は!」。
なんて表現するのがよいか迷った挙げ句出てきた言葉は「早く山に行きたい!」、そんなパックです。

いわゆるアースカラーの本体は、見た目は地味だけれども機能満載。ただ満載なのが良いわけではなく、必要な機能がしっかり機能するようにデザインされたものが満載なのです。サイドポケットの上部にはドローコードが配され、ボトルをしっかりホールド。しかも体側の開口部が低くなっているので取り出しやすいです。フロントポケットは大きく深く、バックル留めなので出し入れ簡単です。

バックパネルは背中のラインに沿うようにカーブし、トップスタビライザーを引くことで背中上部にきっちり載ります。ウエストベルトはベルクロで位置調節でき、背面長に合わせられます。ショルダーベルトのパッドは、薄くなく、厚くなく、ちょうどよい感じ。ハードに動くとフィットのよさからちょっと暑く感じるかなとも思いますが、実際のハイクでテストをしていないので、なんとも言えません。

トップローディングのパックの開口部、雨蓋は、通常とは反対のショルダーベルトにバックル留めされています。これはパック本体を体側に引き寄せる機能を持つトップスタビライザーと連結する仕様です。同社の『ラッシュ28』というトレラン用パックでも採用された機能ですが、ブレのない背負い心地、歩きやすさのキモはここです。この部分にマット等を挟んで、ホルダーとしても使えます。

フロントポケットの脇には長いジッパーが備わり、メインコンパートメントにアクセスできます。「あったら便利だな」という機能は、確実に備えてくれています。またサイドのコンプレッションベルトは任意の位置に配置でき、サイドポケットに収納するモノを選ばないのもうれしいです。

雨蓋のジップポケットは広大。しかも開口部が広いので、出し入れも自在。さらにたくさん入れてもトップスタビライザーを引いてコンプレッションできるので、本体に荷物がある程度入っていれば揺れる心配もありません。本体も含めて収納力はとても高く、軽量コンパクト装備ならテント泊も可能です。

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⑥ミステリーランチ クーリー 25

これは快適に背負える風呂敷です!

今回紹介しているパックの中でも、もっとも小さな容量25ℓ。しかしその小ささを感じさせない収納性のよさを感じます。それを実現しているのがフロントに配されたY字型の3ジップデザインです。ミステリーランチを象徴するもので、メインコンパートメントを大きく開いて、収納したものを風呂敷で包むように収めることができるもの。さらにフロント、サイドには大きなストレッチポケットを装備。背負い心地はしっかりした感じで、疲れて前傾してしまいがちな歩行姿勢も正してくれそうです。

今回の多めの装備を収納しても、このスッキリさ! 3ジップのデザインも目を引き、山で「あのハイカー、やるな」と通り過ぎるハイカーに思われる可能性も高いでしょう。

バックパネルも、いたってシンプル。小型パックということもあって、ショルダー&ウエストベルトのパッドはやや薄め。しかし体へのフィット感あり。その分、ムレの心配を多少感じます。

ショルダーベルトは、パックの背面の深い位置から出ています。これは無段階調整が可能なハーネスシステムのためで、トップスタビライザーを引くことで、パック本体が背中へとフィット。パックに内蔵されたフレームが荷重を受け止め、伝達、分散させ、歩きやすさを実現してくれます。小型パックであっても、大型パックで採用するようなシステムを採用する心意気に、パックづくりへの愛を感じます。

Y字型に開く3ジップシステム。重いものは背中側、軽いものは外側または上部にパッキングするのが基本ですが、なかなかうまく隙間を埋められないこともあります。でもこれだけ大きく開口部が開けば、スーツケースに荷物を詰めるようにきっちり収納できるのでラク! 美しいパッキングを目指したいなら、試行錯誤する前に、このパックを手に入れる方が間違いなく早いです!

ミステリーランチの詳細はコチラ

⑦ザ・ノース・フェイス エフピーハイブリッド30

山を風のように移動したいならコレ!

近年、トレイルランニングのギアで高評価を得ている『ザ・ノース・フェイス』。このパックもそのDNAを受け継ぎつつ、ファストパッキングにも使える大きな容量を装備しています。ブレのなさそうな細身の本体は、背負ってみると想像をはるかに超える軽さで背中にフィットしました。
一言で言えば、しなやか。ハイクだけでなく、トレイルランも取り組む筆者は、今回集めたパックのなかで、このしなやかさこそが、パックに求めている機能なのだとわかりました。

フロント、サイドにはストレッチポケットを装備。それぞれにソフトシート、テーブル、エマージェンシーシート等を収納。コンプレッションストラップで締められるので、脱落の心配もありません。ウエストベルトのポケットも適度な大きさで行動食等を充分に入れておけます。

バックパネルは、パックと背中との間にスペースをつくる、通気性のよいトランポリン構造と呼ばれるもの。背中側のメッシュパネルは、走ってみるとトランポリンのようにパックの揺れを吸収してくれ、不思議と荷物の重さも軽減してくれます。本体重量はMサイズで840gと軽量なのにアルミ性のフレームも装備していて、そのフレームが加重を支える効果もかなり高いです。

ショルダーベルトは、ボトルも収納できるポケットと2本のチェストストラップを装備するベスト型です。トレイルラン用のパックによくある仕様ですが、行動しながら水分やエネルギー補給をする際に安全でストレスなく行えるもの。サイドポケットに収納するよりもボトルの脱落に気が付けるので安心です。

軽量化を優先して、メインコンパートメントの開口部はクルクルと丸めてバックル留めするロールトップ方式を採用。トップローディングと比較しても大きく開くので、中の荷物の出し入れがしやすいです。また収納するモノの量に応じた大きさにできる利点もあり、寒さ暑さによって変わる装備への対応力もあります。ハイクはもちろんランも可能なパックなので、アクティブなハイカーにぴったりです!

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