家庭のエネルギー消費、省エネ建材で削減 ―ユーザー版2018年夏季号から

 2011年3月11日の東日本大震災は、日本の住宅のあり様を一変させたといっていい。家庭の電力供給の基幹となりつつあった原子力発電所は、福島の事故以来軒並み休止し一部で再稼働の動きもあるが見通しは立たない。その中で、スポットが当たってきたのが家庭の省エネルギー化といえる。

 家庭の省エネを進める上での重要な要素が暖冷房。家庭のエネルギー消費の約3割を占めることから、効率的な機器の使い方のほか省エネ性能の高い機器を選択することで、省エネが推進できる。

 また、住宅構造そのものを省エネルギー性の高い躯体にすることで、より大きな効果が得られる。

「断熱」「日射遮蔽」「気密」に注目

 省エネ住宅は、エネルギーの消費を抑えるだけではなく、冬場は室内の温かい空気を室外に逃がさず、逆に夏には室外の熱が室内に入らない住まい。そのために重要なのが「断熱」と「日射遮蔽」、「気密」の3つの要素となる。

 断熱とは、壁、床、屋根裏、窓などを通しての住宅の内外の熱の移動を少なくすること。基本的には、家全体を断熱材ですっぽり包み込むことで性能は高まる。ちなみに、住宅の断熱性能は「外皮平均熱貫流率」(UA値)で示される。

UA値が低いほど高性能な住まい

 住宅の外皮(床、壁、窓など外気と接している各部位)から逃げる熱損失を合計し、外皮面積で割って求める。数値が小さいほど省エネ性能が優れているため、住宅展示場のモデルハウスやカタログで確認してみるのもいい。

 冬の暖房時に室内に逃げ出す熱の約5割、夏の冷房時に室外から侵入する熱の約7割は窓などの開口部から。窓ガラスを複層タイプやトリプル(三重)ガラスにしたり、窓枠もアルミだけでなく、木や樹脂を使った断熱サッシにすることで効果が高まる。

日射をうまく遮ろう

 夏に、室内の温度が上がる最も大きな要因が、外部からの日射熱。そのため、日射を遮蔽することで、室温の上昇を抑え冷房に必要なエネルギーを削減を行う。

 気密性能の向上も、隙間からの空気の出入りを抑えるのが狙い。ただ、高い気密性は一方で空気環境の悪化も招くので、必要な換気量を確保しつつ過剰な空気の移動を減らすことが重要としている。

 省エネ住宅は、部屋内や部屋間の室温がほぼ均一で、北側の風呂もトイレも寒くなく、小型のエアコンでも良く効き、朝・夕は風通しの良い家が実現できる。

 カビやダニ発生や構造材の腐朽の原因となったりする結露も少なく、高齢者が冬の暖房のないトイレや浴室で、心筋梗塞や脳血管障害を起こす「ヒートショック」による健康被害も防止可能なことから、「省エネ住宅」=「快適な住宅」の式が成り立つ。

省エネ住宅には金利優遇のメリットも

 住宅の省エネ化のメリットとして低利融資も。住宅金融支援機構が、各金融機関と提携して実施する証券化ローン「フラット35」の中の優良住宅支援制度「フラット35S」には、省エネルギー性の高い住宅に対し融資金利を優遇する措置がある。

 省エネ住宅を一歩進めた最先端の戸建住宅が、スマートハウスやZEHだろう。家電製品や給湯機器をネットワーク化し、表示機能と制御機能を持つ「HEMS」(ホームエネルギーマネジメントシステム)を搭載。家庭の省エネルギーを促進する、エネルギー使用の〝見える化〟など、今後の新たなツールとして期待されており、モデルハウスなどで確認して欲しい。

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