開館20周年を記念した「版の美」シリーズ第3弾「現代版画の可能性」展が、茅ケ崎市美術館(同市東海岸北)で開催中だ。戦後から現代に至る木版画などが並び、版画の多彩な魅力を堪能できる。
版画家らを中心に毎年、最大50人が自作の版画年賀状を交換したのが「榛(はん)の会」。もらってうれしいかを判断基準に会員が投票し、落選すると翌年は参加できなかった。1935年から55年ごろまで続き、20回までは童画で知られる武井武雄が主宰した。
同館が所蔵する5年分全240枚がずらりと並び、恩地孝四郎や川上澄生ら第一線で活躍する版画家の作品も見られる。戦後間もない46年の作品集には、2年前に応召し参加できなかった作家の作品も加えられ、戦争の影が感じられる。
同館の藤川悠(はるか)学芸員は「木版に限らず、さまざまな技法で作っている。肩肘張らず、力を抜いて楽しんでいる感じが伝わる」と話す。
現代の木版画では、木口(こぐち)木版技法の第一人者、柄澤齊(ひとし)の作品を紹介。かつては茅ケ崎市に13年にわたって居を構えた。木口木版は、木を輪切りにした堅い木口面を彫るもので、緻密な画面が特徴的だ。
柄澤の「ZIPANG(ジパング)」シリーズは日本の昔話を題材に、古今東西の名画を取り入れた戯画。「かぐや姫」には、ボッティチェリの聖母の構図が見られる。濃密な白黒の世界に、知的な興趣が詰まる。
版画の概念を大きく変えるのが、小野耕石だ。シルクスクリーンを何層も刷り重ねることで、インクの柱が出現する。見る位置によって見え方がさまざまに変わる面白さがある。
◆2月3日まで。月曜休館。一般200円、大学生100円。問い合わせは同館電話0467(88)1177。