【MLB】史上初の満票で野球殿堂入りのリベラ 魔球カットボールで史上最高のクローザーに

史上初の満票で殿堂入りを果たしたマリアーノ・リベラ氏【写真:Getty Images】

19年の米野球殿堂入り投票で、史上初の満票を得て1年目で選出されたマリアノ・リベラ

 2019年の米野球殿堂入り投票で、史上初の満票(425票)を得て、1年目で選出されたマリアーノ・リベラ氏は、1969年11月にパナマ共和国の首都パナマで生まれた。19歳の時にヤンキースのトライアウトを受けて合格し、1990年にマイナーでのキャリアをスタートさせた。

 5年かけてマイナーリーグを卒業、1995年にメジャーデビューした。25歳という遅いスタートだった。1年目は主として先発投手で起用されたが、成績はパッとせずマイナー降格。再昇格した9月から救援投手となった。翌1996年は、クローザーのジョン・ウェッテランドにつなぐセットアッパーとして5セーブ、26ホールド(当時は非公式記録)の活躍。

 このオフにウェッテランドが移籍して、1997年からクローザーとなる。当時のリベラは速球、スライダー、チェンジアップが武器だったが、この年にカットボールを会得し、これがマネーピッチとなる。この年43セーブ。以後、30セーブ以上を通算15回記録。最多セーブ3回をマークしている。

 カッターを編み出してからは、ほとんど1種類の球種しか投げなかった。153キロ前後の球速で、急激に落ちるカッターは、右、左の別なくすべての打者に有効だった。キャリアの被打率は.211、制球も良く1シーズンに与える四球は10個前後。K/BB(奪三振数÷与四球数)は、4.10だった。また被本塁打も少なかった。

 ヤンキースは長く、クローザーの心配をする必要がなかった。この時期、アメリカン・リーグ東地区で、1998年から9連覇を果たしたが、この原動力となったのが、マリアノ・リベラ、デレク・ジーター、ホルヘ・ポサダという生え抜きのフランチャイズプレイヤーたちだった。

現役引退となった13年にも44セーブを挙げた

 2009年オフにはリベラは40歳を迎えたが、衰えを見せなかった。40歳以降で126セーブを挙げる。2012年は負傷で5セーブに終わるが、2013年限りでの引退を表明し、最後のシーズンも44セーブを挙げた。

 通算成績は、1115登板82勝60敗、歴代最多となる652セーブ、1283.2回、防御率2.21。イチローはリベラが得意で、15打数6安打1本塁打、打率.400を記録している。

MLBセーブ数5傑()は実働

1.マリアノ・リベラ 652セーブ(1995~2013)
2.トレバー・ホフマン 601セーブ(1993~2010)
3.リー・スミス 478セーブ(1990~1997)
4.フランシスコ・ロドリゲス 437セーブ(2002~2017)
5.ジョン・フランコ 424セーブ(1984~2005)

 MLBの最多セーブ賞は、ア・リーグが「マリアノ・リベラ賞」、ナ・リーグが「トレバー・ホフマン賞」。ホフマンも昨年、殿堂入りしている。現役の最多セーブはFA中のクレイグ・キンブレルの333セーブであり、リベラの牙城は当面崩れそうにない。また、952完了も史上1位。ポストシーズンにも強く、MLB最多の42セーブを挙げている。

 パナマからの殿堂入りは、安打製造機ロッド・カルー(1991年)に続いて史上2人目。引退直後から、1年目での殿堂入りが確実視されたが、満票での選出は球界を驚かせた。リベラがマウンドに上がると、相手チームもファンも、逆転をあきらめた。これほどまでの絶対的なクローザーはMLB史上でも稀だった。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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