地図とコンパスはもう不要? スマホの地図アプリが果たす役割とは 2017年の山岳遭難者は3,111人。そのうちの4割、1,252人が道迷い遭難でした。山岳遭難の多数を占める道迷い遭難対策としては「紙の地図とコンパスを持って正しく使いましょう」とよく言われます。しかし、実際に山で道に迷った時に紙の地図やコンパスは役に立つのでしょうか?スマホの地図アプリもあるし、もはやいらないのでは?一度立ち止まって、一緒に考えてみましょう。

もしかして、紙の地図っていらないかも?

「登山には地図とコンパスと持っていきましょう」とはよく言われますし、それは間違いなく正しいです。しかし多く人がスマホを使うようになった現在、スマホに登山用の地図アプリをインストールすれば地図上に現在地を示すマークが表示されます。
こんな便利なものがあるのなら紙の地図やコンパスは必要ないのかもしれません。

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だって、スマホがあれば現在地も地図も見られるし

スマホの画面は高解像度で紙の地図と変わらない高精細な地図を表示出来ます。地形も読めますし、GPSで現在地も分かります。

人間は道に迷ってパニックになれば冷静な判断が出来ません。そんな時でも正確な現在地を教えてくれるGPSは非常に心強い存在です。

だって、紙の地図とコンパスって迷ったら使えないよね?

紙の地図は現在地が分かっている状態で使うもので、迷ってから現在地を特定するのは非常に難しいのです。もちろんコンパスも現在地が分かっていなければ使えません。

名前が分かっている目標物2点以上の方位が分かれば現在地を特定すること(クロスベアリング)もできますが、視界が悪い樹林帯や霧の中、慣れていない山域では困難です。現実的には使えないと思ったほうがよいでしょう。

だって、地図読み出来ないし持ってても意味なくない?

(『山と高原地図』ならコースタイムや目印などの表記があるので読みやすいが、地形図ともなると素人には難しい)

地図読みの達人ならいいのでしょうが、慣れていない人が紙の地図とコンパスを持っていても現在地を特定するのは困難です。それならスマホのGPS地図アプリのほうが現在地が表示されるだけマシです。現在地が分かればリカバリ出来るかもしれません。

**【ポイント1】地図と現在地はスマホで見られる
【ポイント2】紙の地図とコンパスは使えるシーンが限られる
【ポイント3】読図ができなければ紙地図で現在地を特定することは難しい。スマホGPSなら現在地が分かる**

紙の地図とコンパスが無いと困る3つのシチュエーション

では、本当に紙の地図とコンパスを持っていなくてもいいかといえば、それも少し違います。

紙の地図を使ったほうが便利なこともあれば、GPSが適していることもあるからです。それぞれの長所に合わせて役割分担するのがおすすめです。

計画作りには紙地図の方が便利

まず、計画時には『山と高原地図』(昭文社)や登山ガイドブック等の紙の登山地図が役立ちます。コースタイムや水場、登山口のアクセスなどが書いてあるからです。

登山計画を立てるときは山と高原地図と国土地理院発行の2万5千分の1地形図を併用するのがおすすめ。

山と高原地図で登山ルートを決めたら、地形図には予定コースの情報や出発、到着時刻などを書き込んでおき行動中はコチラを使います。情報を書き込んだ地図は、地図であり計画書でもあります。

予定を書き込んだ地図を家族や友人に渡しておけば、詳細な行程が分かるので『もしも』の時も安心です。

紙の地図は広い範囲を見られる

紙の地図はテーブルなどに広げてみんなで見られるというメリットもあります。一度に広い範囲を見ることも出来ます。これはスマホの小さな画面では敵いません。

電子機器は故障や電池切れで使えなくなることがある

電子機器は電池切れや水濡れ、落下になどよる故障のリスクもあり(※)、絶対ではありません。リスクヘッジとしても紙の地図は必要です。
※…スマホなら機内モードにしてモバイルバッテリーを使う、ストラップやケースで保護するなど対策はありますが100%確実とは言い切れません。

紙とアプリは『補完』しあう関係

紙の地図とGPSの地図アプリは使い方も役割も違います。アプリがあれば紙の地図が要らないわけではなく、紙の地図があればアプリが要らないわけでもありません。

お互いを補完する関係にあると考えれば、それぞれをうまく使い分けることができます。

紙の地図だけで山を歩くのはもちろん可能ですが、万が一道に迷ってしまったらほとんど役に立ちません。必ずアプリで現在地を特定してリカバリーできるようにしておきましょう。

結局、紙の地図もGPSも持ち、正しく使えなくてはならないのです。

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