仲間と走りたい 肺がん闘病中の女性、27日に葉山駅伝へ

 27日に行われる第34回葉山町民駅伝大会(通称・葉山駅伝)に、肺がんで闘病中の女性が初挑戦する。抗がん剤の副作用で体調が安定せず、気持ちがふさぐ時もあるが、スポーツクラブで知り合った気の置けない仲間に支えられ、出場を決心した。仲間への感謝や新たに生まれた目標を胸に、最終走者としてたすきをゴールまで届ける。

 初参加するのは、横須賀市秋谷に住む森嶋浩子さん(57)。10年近く通うアウトドアスポーツクラブ「BEACH葉山」(同町下山口)で、会員やスタッフによる女子チームの一員に名を連ねた。11・4キロコースの最終5区(1・9キロ)を請け負う。森嶋さんは「とにかく止まらず、ゴールに着きたい。葉山の景色を感じながら走りたい」と笑顔をみせる。

 肺がんと告知されたのは2016年11月。海外で登山する準備のために受けた健康診断で、病変が見つかった。翌月に手術を試みるが切除できず、放射線治療も受けられず、抗がん剤治療が始まった。

 経口薬を1日1錠、服用。副作用で体調が崩れ、外出できない日もある。ダイビングやカヤックで葉山の海を満喫してきたが、海水による感染症の危険があると医師に止められた。

 それでも、町内での山歩きやスロージョギングなど、体調の良い時に過ごすクラブでの時間は、かけがえのないものだ。「病の現実を受け止められない時もある。でも、BEACHがあるから家に閉じこもらずに済んでいる。私には最高のクスリです」

 昨秋、インストラクターの栂岡(つがおか)環さん(67)が駅伝への参加を持ち掛けた。栂岡さんは「浩子さんの頑張る姿は周りの誰もが共感し、応援していた。みんなで一緒の目標をつくりたかった」と説明する。

 当初は森嶋さんも他の会員も、タイムを競うイメージが強い駅伝に及び腰だった。だが森嶋さんの気持ちに変化が生じた。

 抗がん剤の効き目が落ち、がんが再び大きくなり始めていた。来月以降は治療方針を見直さざるを得ず、体により負荷が掛かる厳しいものに変わるかもしれなかった。「今なら走れるかもしれない。栂岡さんも『ゆっくりでいいよ』と言ってくれている。だったら、みんなと一緒に走りたい」。その思いに他の会員も「浩子さんが『やる』と言うなら出ようよ」と出場を決意、大会に向けて一緒に練習を重ねた。

 「みんなと駅伝を走ることでパワーをもらい、次の治療に生かしたい。これからも貴重な時間を大切に、前を向いていたい」。森嶋さんにはホノルルマラソンに出場したいという新たな目標も生まれた。

 第34回大会には過去最大の136チームがエントリーし、小学生からお年寄りまで計680人が葉山の風を感じながら駆け抜ける。

葉山町民駅伝大会に初挑戦する森嶋さん(手前左)。大会実行委員長の中川六郎さん、BEACH葉山社長の津田和司さん、栂岡環さん(後列左から時計回り)らも温かく見守る=葉山町下山口のBEACH葉山

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