子どもの安全を守るためのセキュリティ対策は、子どもたちにとっては“邪魔者”【子どものパソコンとセキュリティ】

子ども用のスマートフォンには、子どもたちの安全を守るため、「子どものためのセキュリティ対策」が不可欠です。ですが、子どもたちにとって「子どものためのセキュリティ」は、残念ながらスマートフォンを自由に楽しむ上では“邪魔者”となりがちで、これを適切に運用するには、親側にもしっかりとした知識が必要です。

「子どものためのセキュリティ」は、子どもにとっては“邪魔者”

スマートフォンやインターネットは、STEM教育にとって極めて有用なツールであり、また今どきの子どもたちにとっては、友人たちとの重要なコミュニケーション手段でもあります。ですが同時に、スマートフォンやインターネットは、とくに子どもたちにとって、極めて危険な存在でもあるため、子ども用のスマートフォンには、子どもたちの安全を守るための「子どものためのセキュリティ」が絶対に必要です。

しかし残念ながら、子どもの安全を守るためのセキュリティ対策は、多くの場合子どもたちにとって“邪魔者”です。「フィルタリング機能」や「利用時間制限」といった子ども用セキュリティ機能は、子どもたちの安全を守り、スマートフォンやインターネット依存症になることを防ぐための重要な機能なのですが、子どもたちがスマートフォンやインターネットを自由に楽しむことを妨げる“障害”でもあるからです。

そして、今どきの子どもたちの情報収集力を侮ってはいけません。子どものためのセキュリティは、残念ながら今どきの子どもたちにとっては共通の“邪魔者”なので、インターネット上にはこれらのセキュリティ機能をかいくぐるための情報が溢れ、最新情報はあっという間に拡散します。STEM教育時代の子どもたちのIT力は、私たちの想像を容易に凌駕していると認識しておかなくてはなりません。

ですから、「子どものためのセキュリティ」を適切に運用するには、親側にもしっかりとした知識が必要です。今回は基礎の基礎として、まずは子どもを守るためのセキュリティ機能にはどういったものがあるのかについて、概要を説明します。

Webフィルタリング機能

まずは「Webフィルタリング機能」です。「Webフィルタリング機能」は、インターネット利用時に、アダルトや違法薬物、詐欺、出会い系、暴力的なコンテンツといった子どもにとって有害、あるいは危険なサイト表示を自動的にブロックする機能で、「子どものためのセキュリティ」の中でもっとも重要な機能です。

確かに、「Webフィルタリング機能」を有効にしていたとしてもすべての危険をブロックできるわけではありません。「Webフィルタリング機能」がブロックできるのは、それなりに知名度があるサイトやサービスだけで、ネットいじめの温床となる例が多い「学校裏サイト」のような私的サイトへのアクセスは、ほとんどの場合ブロックできません。また、TwitterやFacebook、YouTubeといったサービス全体をブロックすることは可能ですが、この種のサービスのうち、有害なコンテンツやユーザー“だけ”をブロックする、といったことも困難です。

とはいえ、子どもにとってとくに危険が大きいサイトの多くはブロックされますし、ブロックの対象範囲も年齢等でまとめて設定できるため使い勝手がよく、子どもの年齢に合わせた設定変更も容易です。よって、子どもにスマートフォンを与える際に、まず行うべきセキュリティ対策だと言えます。

ネット上の有害・危険情報をブロックする「Webフィルタリング機能」

なお、「Webフィルタリング機能」は、2018年2月に改正された「青少年インターネット環境整備法」によって、現在では18歳未満のスマートフォン契約時に、店頭での設定が義務化されています。ですから、2018年2月以降に子ども用スマートフォンを契約・購入した場合には、「Webフィルタリング機能」は初期状態で有効になっているはずです。

残念ながら現在でも、子どもに強く頼まれたり、設定方法や効果がよくわからないといった理由で、親が「Webフィルタリング機能」を無効化してしまう例が少なくありません。ですが、インターネット上には子どもにとって有害な情報が溢れており、場合によっては取り返しのつかない犯罪に巻き込まれてしまう可能性もあるため、どれほど子どもが頼んだとしても、「Webフィルタリング機能」は必ず有効にしておくべきです。

ネット犯罪被害児童の9割が「フィルタリング機能」を無効にしている(※警察庁「平成29年上半期におけるコミュニティサイト等に起因する事犯の現状と対策」より)

Google検索、YouTubeなどのフィルター設定

スマートフォン本体やアプリの「Webフィルタリング機能」と同時に、「Google検索」や「YouTube」といった、子どもがよく使うサービスのフィルター設定も、同時にやっておくといいでしょう。なお、「Google検索」や「YouTube」のフィルター設定はいずれも「Googleアカウント」を使って行うので、「Googleアカウント」のパスワードはしっかりと親が管理する必要があります。

アプリのインストール制限

次に、アプリのインストール制限です。「子どものためのセキュリティ」には、新規アプリのインストール制限も極めて重要です。

たとえば「Webフィルタリング機能」ですが、この中には、端末デフォルトのブラウザや、フィルタリング機能に付属する専用ブラウザなど、特定のブラウザ“だけ”を動作対象とするものが、少なからず存在します。つまり、この種の「Webフィルタリング機能」の場合、設定が適切だったとしても、端末に対象外のブラウザアプリをインストールするだけで簡単に回避できてしまいます。

別のブラウザを使うとフィルタを回避できてしまう場合がある

なお、「フィルタリング機能」の問題以外でも、アプリの中には有害なものや詐欺アプリのような危険なものがありますし、端末の各種セキュリティ設定を変更したり、回避する目的で利用可能なものもあります。

この種のアプリも、「子どものためのセキュリティ」にとっては極めて危険なので、子ども用スマートフォンでは新規アプリのインストールを禁止するのが原則。親の負担が増えてしまいますが、子どもが新規アプリのインストールを望む場合は、その都度理由を尋ね、対象アプリの安全性を親自身の目で確認し、インストールの可否は親が決める、というスタンスを堅持することが重要です。

アプリの購入/課金制限

アプリのインストールと同様に、子ども用スマートフォンではアプリやコンテンツの購入や課金に対する制限も重要です。

スマートフォン用アプリやWebサービスは、中には名実ともに無料のものもありますが、大半は収益を上げること、つまり商売目的で公開されています。中でもゲームアプリは、「基本無料」を謳っているものであっても、実際には課金への誘惑が非常に強い内容になっているものが大半で、しかもその要求額は馬鹿になりません。

課金に必要な金額はゲームによって異なりますが、「友だちに自慢できるレベル」を目指すとなると、月に数万円以上の課金が必要なものも珍しくなく、これほどの大金を安易に子どもに使わせることは、親の財布のダメージである以上に、教育上もよくありません。

よって、子ども用スマートフォンでは、購入や課金も原則禁止すべきで、子どもから頼まれた場合は、その都度その可否を親が決めるようにしておきましょう。

「基本無料」を謳っていながら高額な課金を要求するゲームは少なくない

なお、言うまでもない話ですが、アプリの購入/課金制限は、「クレジットカード情報をスマートフォンに登録しない」だけでは不十分です。「Google Playカード」や「iTunesカード」といった、プリペイドカードがコンビニなどで簡単に購入できるからで、端末の購入/課金機能自体を制限しておかないと、場合によってはプリペイドカード購入のために子どもが犯罪行為に巻き込まれるような危険もあり、注意が必要です。

購入/課金用プリペイドカードはコンビニなどで簡単に購入できる

インストール済みアプリ利用の可否

スマートフォンには購入直後の状態ですでに、多数のアプリがインストールされています。端末に最初からインストールされているアプリは「プリインストールアプリ」と呼ばれますが、「ジュニアスマホ」のような子ども用端末以外では、「プリインストールアプリ」の利用制限も重要です。通常のスマートフォンは、判断能力が十分ある大人用にチューンナップされており、「プリインストールアプリ」の中にも、子どもにとっては危険なものが含まれていることがあるからです。

たとえば、代表例として「Twitter」や「Instagram」「Facebook」といった「SNS」が挙げられます。「SNS」は、コミュニケーション用ツールとして有用ではありますが、子どもにとっては「出会い系」や「児童ポルノ」「ネットストーカー」などの危険があるサービスでもあり、子ども用スマートフォンでは無効化しておくほうが安全です。また、「YouTube」も、子どもに人気のサービスではありますが、アダルトや暴力的なコンテンツが一部に含まれているため、とくに低年齢層では無効化しておいたほうが無難です。

プリインストールされている例が多い「SNS」も、子どもにとっては危険な場合がある。
ネット犯罪被害児童の1/3強は「Twitter」経由で被害に遭っている(※警察庁「平成29年上半期におけるコミュニティサイト等に起因する事犯の現状と対策」より)

さらに、iPhoneの「Safari」やAndroidの「ブラウザ」といった、端末のデフォルトブラウザアプリにも、実は注意が必要です。利用している端末や「Webフィルタリング機能」によりますが、「フィルタリング機能」の中には、動作対象のブラウザアプリが限定されているものが少なくないからです。

たとえば、「フィルタリング機能」に付属する「専用ブラウザ」だけを動作対象とする「Webフィルタリング機能」の場合、端末デフォルトのブラウザアプリ上ではフィルタリング機能が動作しません。ですから、こういった場合にはデフォルトのブラウザアプリも無効化しておく必要があります。

それ以外にも、設定アプリなど端末の設定を変更できるようなアプリは、セキュリティ機能を子どもに勝手に解除されてしまう可能性があるため、パスワードなどでロックしておく必要がありますし、低年齢層では「アドレス帳登録外からの着信やメール受信」などもブロックするほうが安心です。

利用時間制限

ここまで説明してきた直接的な危険と並んで、最近では社会問題となりつつあるのが、「スマートフォン依存症」です。スマートフォンを必要以上に利用し過ぎるスマホ依存症は、大人にとっても大きな問題ですが、子どもにとっては必要な睡眠時間がとれなくなって健康被害につながったり、勉学やスポーツへの集中力が落ちるなど、その被害はより深刻です。

子どもの睡眠時間とスマートフォン利用時間には密接な関係がある(※文部科学省「平成26年度「 」より)

スマートフォンは小型デバイスなので、やろうと思えば布団の中でもこっそり利用できます。ですから、子どものスマートフォン利用状況を目視だけで把握するのは非常に困難で、依存症対策には端末自体の利用時間制限が有効です。とくに、子どもにとって睡眠は非常に重要なので、就寝〜起床時間はスマートフォンを利用できないよう、設定しておくべきです。

なお、端末やフィルタリング機能の中には、端末全体の利用時間に加えて、アプリや、アプリのカテゴリ単位で利用時間を制限できるものもあります。この種の端末であれば、「ゲームは一日1時間まで」「SNSは2時間」「通話とメールはいつでもOK」といった具合に、子どものスマートフォン利用方法を細かく制限可能です。

可能なら「歩きスマホ」禁止機能も

端末やフィルタリングアプリの中には、端末の各種センサーを利用した「歩きスマホ禁止機能」を備えるものもあります。「歩きスマホ」は、時に死亡事故にもつながる極めて危険な行為なので、機能が備わっているならこちらも 有効にしておきましょう。

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