議員の実情 2019 統一地方選アンケート(6)<政治倫理条例> 進まぬ厳格化 緩和要望も

 「私は頑強ですよ。報道されることが摩訶(まか)不思議。少々踏まれたって蹴られたって参りませんよ」

 昨年12月。長崎県議最年長の宮内雪夫(85)は、自らが理事長を務める社会福祉法人を巡る問題への認識をあらためて記者に問われ、語気強く言い返した。

 昨年2月、法人職員から長年寄付を集めたり、職員が秘書活動をしていた問題が発覚。政治資金規正法は雇用関係や組織の影響力を利用した寄付のあっせん行為を禁じている。秘書活動については、法人から給与を受ける職員が勤務時間中に従事していた。社会福祉法は社会福祉法人が社会福祉事業の収益を法人外に支出するのを認めていない。

 宮内は昨年3月の会見で「政治的にも道義的にも非難されることはない」と強調。今もその認識は変わっていない。母子家庭で育ち、紙箱作りを営む母が雇った障害者を5歳のころから手伝った。こうした体験を基に福祉に力を注いできたとの自負は強く、「寄付は職員にプレッシャーをかけたわけではなく『ちょっと加勢しよう』という自然発生的な形」。職員の秘書活動も「法人の施設の仕事もした」と主張する。

 この問題を機に、長崎県議会は政治倫理条例を厳格化するべきか検討したが、見送った。長崎、五島両市議会では、議員は市から補助金などの交付を受けている社会福祉法人などの有報酬役員に就任しないよう努めなければならないと定めている。長崎県議会でもそうした規定を設けるべきだとの意見が出たが、少数派だった。法人への県の特別監査の結果は出ていないが、改正見送りに宮内は胸を張る。「それなりの答えが出た」

 長崎県議会と長崎県内21市町議会のうち、政治倫理条例があるのは14議会。議員アンケートで「所属議会の政治倫理条例は厳しいと思うか」と質問したところ、この14議会では「思わない」「どちらかといえば思わない」が計64%だった。一方、条例見直しが必要と「思わない」「どちらかといえば思わない」も計66%を占めた。

 緩和を求める議員もいる。親族が建設業を営むある議員は、所属議会の条例のうち、親族が役員を務める企業は自治体の請け負い業務を辞退するよう努めなければならないと定めた部分の廃止を望む。「経営に余裕があれば『雇われ社長』を置いて規定に抵触しないようできるだろうが、うちのような小規模企業に余裕はない」

 各議会が同条例に掲げた「高潔性」。有権者からは罰則を設けるなどし、実効性を高めるべきだとの声も上がる。同条例に詳しい九州大名誉教授の斎藤文男は指摘する。「きちんとした条例をつくって運用し、主権者の市民が監視を続ける。そうやって不正を防ぎ、地方政治への信頼を取り戻していくことが重要だ」
 =文中敬称略=

 ■調査方法■ 長崎新聞社が長崎県内全ての地方議会(長崎県議会、13市議会、8町議会)の全議員435人(当時)を対象に実施した。昨年10月末からアンケート用紙(回答は選択肢と自由記述)を配布し、同12月中旬までに回収。403人から回答(回収率92.6%)を得た。

政治倫理条例は厳しい?
長崎県議会政治倫理条例文。清潔で民主的な県政の発展への寄与が目的とされている

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