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ありふれた表現だけれど、今シーズンのアーセナルは野戦病院だね。ウナイ・エメリ監督がベストと信じる構成で臨んだ試合は、ほとんどないんじゃないかな。マンチェスター・ユナイテッドとのFAカップ4回戦でも、ソクラティス・パパスタソプーロスが左かかとを痛めて全治一か月。ローラン・コシェルニーは頬骨、あるいはあごの骨折が疑われている。ロブ・ホールディング、ダニー・ウェルベック、エクトル・ベジェリンも長期の戦線離脱を余儀なくされているから、チャンピオンズリーグの出場権奪回は、かなり難しくなってきた。
しかもチーフスカウトのスヴェン・ミスリンタートが、2月8日をもって退任する。在任期間はわずか1年3か月だ。まぁ、ミスリンタートを招聘したイヴァン・ガジディス(現ACミランCEO)が昨シーズン限りでアーセナルを去っているので、ありうる話だな。強化プランを巡り、フットボール・ディレクターのラウル・サンジェイと対立していたって噂は昨年夏ごろから届いていたし、エメリとも波長が合わなかったらしい。孤立無援に近かったのかもしれないね。
では、この人事がアーセナルにどう影響するか……。ミスリンタートの慧眼は業界でも定評があり、ドルトムントのチーフスカウトを務めていた当時にロベルト・レヴァンドフスキ、ピエール・エメリク・オバメヤン、香川真司などの才能を見抜いてきた。一方、サンジェイはコネクション重視型。元バルセロナ・ディレクターという肩書を活かそうとしている。スペインのルートねぇ……。
いったい、アーセナルの序列は何番目? バルサやマドリードの2チームを上まわらないでしょ。だからサンジェイがコネクションを持っていたとしても、サポーターが満足するような選手を獲得できる確率は低い、と考えられなくはないかな。
また、サンジェイは「30代の選手は現行の契約まで」とも明言しているから、ナチョ・モンレアルとステファン・リヒトシュタイナーは今シーズンで、コシェルニーも来シーズンでアーセナルと別れを告げる。ペトル・チェフが引退を公表し、アーロン・ラムジーも早ければ1月にユベントスへ移籍する。新時代到来といえば聞こえはいいよ。でも、彼らの後釜は育っていない。サンジェイが市場でうまく立ちまわれる保証もない。
強化の権限を一本化するための人事なんだろうけど、市場で実績のあるミスリンタートを失うダメージは大きいと思うよ。ちなみにバイエルン・ミュンヘンが、ミスリンタートと接触を図ったそうな……。
文/粕谷秀樹
サッカージャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。