新型インフル流行防げ 川崎市で指定医療機関に搬送訓練

 川崎市は29日、外来受診で判明した新型インフルエンザの患者を市内の感染症指定医療機関に搬送する訓練を初めて実施した。医師や看護師、保健所職員らが参加。二次感染を避けるための手順や医療機関同士の連携などを細かく確認し、万一の事態に備えた。

 市保健所によると、重症化しやすい新型インフルエンザが流行した場合、市内では約2万人の入院患者が発生し、死者は5千~6千人に及ぶとされている。市保健所感染症対策課は「新型インフルエンザは2009年に日本を含め世界的に大流行したが、当時の対応を知る職員も異動するなどしており、訓練で細かく流れを確かめたい」と訓練の意義を説明した。

 市内には、新型インフルエンザの疑い患者を診察する「帰国者・接触者外来」の開設が可能な協力医療機関が11施設ある。訓練では協力医療機関の一つである関東労災病院(中原区)から感染症指定医療機関の市立川崎病院(川崎区)に搬送するまでの流れを確かめた。

 中原区に住む40歳の男性が新型インフルエンザの発生国に1週間滞在し、帰国後に発熱したため中原区保健所支所に電話相談したとの想定で訓練はスタート。関東労災病院に到着した患者役の男性は、防護服姿の看護師に誘導され、専用の通路から地下広場へ移動した。地下には気密性の高いテントが設けられ、防護服を着た医師と看護師が患者を問診。簡易検査と遺伝子検査のため、鼻から3本の検体を採取した。

 テント内の診察では、カルテをビニール袋に入れて密閉したほか、ノートパソコンのキーボードにもウイルスをガードするためのラップを掛けた。簡易検査でインフルエンザA型が陽性と判明し、遺伝子検査の結果を待つため一時的に同病院に入院する措置も実践した。

 市立川崎病院への移送時は、隔離用の「アイソレーター」と呼ばれる器具で患者を包んだ上でストレッチャーで運ぶなど一連の手順を確認。川崎病院でも患者の入院受け入れ訓練を継続して行った。

隔離用の特殊な袋で患者を包み、移送する手順を確認する医療関係者=川崎市中原区の関東労災病院

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