地域コミュニティを再建する鍵 地域をまわり、ヒアリング調査で見えたこと

ヒアリング調査は、誰一人取り残さないために

あまり報道されていないが、岡山市では、北区・東区を中心とした8,042棟が平成30年7月豪雨で被災した。(岡山市広報第156報 平成30年11月30日15時発表。)岡山市と岡山NPOセンターは発災2カ月が過ぎた9月、被災者のニーズや問題点を掘り起こすために、のべ451人の有志の協力のもと、約1800世帯を一軒一軒回ってヒアリングを行った。被災前から独居高齢者が地域コミュニティから疎遠になっていることは問題視されていた。被災時には、特に支援の手が届きにくい。

このヒアリング調査の調整と実施に携わった岡山NPOセンターの高平亮さんからお話を伺った。

 

住民が自発的に動くコミュニティも

岡山市東区南古都(みなみこず)「小鳥の森団地町内会」ではボランティア・グループと町内会が連携して被災者の支援にあたっていた。当初はゴミの片づけや清掃が活動の中心となっていたが、住民のニーズに応じてマッサージや買い物支援を実施するようになった。

同地区に入ったボランティア団体「Take Action」と「岡山医療生活協同組合」は「自分たちのようなボランティア・グループがいなくなっても、地域が困らない状況を作る」ことを意識していたという。町内会長もその考えに同調し、地域が主体となった移動支援の実現を検討されている。

高平さんは同町内会のようにこのたびの災害が「住民が自発的に動くコミュニティ」のきっかけとなることを期待している。

「自分たちのことは自分たちでなんとかする」という権利

「小鳥の森団地町内会」のような事例を増やすためには、多くの住民が、自分たちの困りごとを自分たちで解決しようと考えるようになり行動することが大切だ。
ヒアリング調査では、住民からの岡山市の対応に対する怒りの声を聞くことが度々あったという。

例えば、被災住宅の「応急修理制度」を利用するためには事前に手続きをしておかねばならず、自身で修理を依頼し、代金を支払い終わっている場合、補助が受けられないしくみになっている。そのほかにも行政の支援は「申請主義」が原則となっており、制度を知らないために支援を受けられていないという状況が多く見られた。「岡山市のアナウンスがもっと早かったら・・・」という声に、高平さんは思うことがあったと語る。

「この声をそのまま行政に伝え、行政からの情報発信のタイミングが早くなったとしても一定数の住民にはやはり届かないのだろうと思います。情報が届かない、届いても手続きができない理由を考えた時、行政の限界が見えてきました。」

「もちろん、発災直後の救命期に住民は何もできませんし、被災された人たちに他人や地域のことにまで手を差し伸べてくださいとはなかなか言えません。でも、『自分たちが望む地域をつくる権利を持っているのはその地域に住む人だけ』なんです。だから被災された人たち自身に立ち上がってほしいし、そうでなければ地域は変わらないと思います。行政に『やってくれ』ではなく、自分たちに『やらせてくれ』になった地域は住民が生き生きしていますから」。

 

NPOが持つ第三者の視点を持つこと

NPOで支援活動している人は、住民と行政の両方の視点を持っている。
そのため、時には住民に対し、『少し行政に甘え過ぎではないか』と言うことも必要なことがある。

住民も行政の人も、困ったときは「自分が間に立つNPOだったらどう感じるだろう」と立ち止まって第三者の視点を持ってみてはどうだろうか。そうすることで、住民が自発的に動いていけるコミュニティが生まれるかもしれない。

 

いまできること取材班
文章:黒田真衣
写真:黒田真衣、松原龍之
編集:松原龍之

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