性的指向に関係なく、自分の気持ちを大事にした結婚式をしてほしい-。長崎県北松浦郡佐々町で貸衣装、スーツなどのオーダーメードを手掛ける「L'ECRIN(レクラン)」は、そんな思いで人々を迎える。昨年11月からLGBT(性的少数者)の人向けの結婚式のプロデュースを開始。代表の江頭知裕さん(34)は「LGBTウエディングが普通になればいい」と相談を待っている。
きっかけは、友人の何げないひと言だった。「LGBTの人の結婚式って、どうしてないんだろう」。調べると、対応する式場の少なさに驚いた。誰もやらないなら、自分が始めよう-。式場や教会、神社を訪ねて回った。
しかし「前例がない」「周りの目がある」といった消極的な返事ばかり。「あなたとは価値観が違いすぎる」と言う人もいた。現実を知り、当事者でなくても落ち込んだ。本人だったら、この何十倍も、何百倍も傷つくだろう-。公言しない人の気持ちが、分かったような気がした。
そんなときに巡り合ったのが、町内にある浄土真宗本願寺派清流山正福寺の住職、清原恵雄さん(52)だった。「ぜひ実現しましょう。ドレスでもタキシードでも外国人でも何でも、大歓迎です」と快諾してくれた。清原さんは「浄土真宗は『ありのままの自分でいさせてくれてありがとう』と阿弥陀様に手を合わせます。寺は、どんな人でも受け入れる場所です」と柔らかな笑みを浮かべる。
好きな装いで執り行う仏前式。衣装や寺の予定さえ合えば、思い立った日に来店してその日に式を挙げることができる。英語の通訳にも対応している。
「門出を迎える2人の幸せそうな顔を見るのが、何よりうれしい」と語る江頭さん。小さな町に、豊かな社会への光がともる。
問い合わせはレクラン(電0956-76-9512)。