検証 佐世保市政 朝長市長の3期(3)<基地問題> 返還前進へ独創的発想を

 佐世保は、基地の街だ。米海軍佐世保基地と海上自衛隊佐世保地方総監部が中心部に位置し、佐世保港には灰色の軍艦が浮かぶ。陸上自衛隊相浦駐屯地もある。それらとの「すみ分け」は、佐世保市政の重要課題の一つだ。

 16日夕、九州防衛局長や海自佐世保地方総監、副知事、陸自水陸機動団長らが顔を合わせた。市役所で開かれた佐世保問題現地連絡協議会。朝長則男(69)は「防衛政策の協力と商港発展を並立させる難しい課題がある。新返還6項目を基調に早期実現できるよう、引き続き尽力したい」と強調した。

 「すみ分け」について、歴代市長は米軍提供施設などを返すよう、国に要望してきた。1971年には「返還6項目」、98年には修正した「新返還6項目」を掲げた。朝長もその流れを受け、取り組んできた。

 市長に就いた2007年以降、返還や一部返還、基本合意など4項目が前進した。しかし、依然として佐世保港の約8割は制限水域だ。

 最重要課題と位置付ける「佐世保弾薬補給所(前畑弾薬庫)の移転・返還」は、11年の日米合同委員会で合意。国が移転先の針尾島弾薬集積所(針尾弾薬庫)の配置検討を進めているが、8年が過ぎた今も返還時期は決まっていない。

 ある市議は「時間がかかる問題だ」と理解を示す。その上で、17年に有識者会議が跡地利用構想の報告書をまとめたことを挙げ「手順は積み上げている」と一定評価する。

 これに対し、受け入れ先周辺の江上地区の住民は不満を隠さない。ある住民は「(受け入れと)引き換えに要望した項目についても、求めているような進展はない。『受け入れを白紙に戻せ』という住民もいる」と憤る。

 それでもこうした批判の声は、あまり表に出てこない。別の市議は「朝長が地域をまめに回っているからだ」と分析しつつ、朝長の基地政策について「何でもかんでも、イエスマンのように受け入れるのはどうなのか」と首をひねる。

 米軍の動向を監視するリムピース佐世保の編集委員、篠崎正人(71)は、朝長について「基地問題もそうだが、何でもそつなくこなす。野球の守備でいうと、セカンドのような性格だ」と例える。そしてこう付け加えた。「問題を前進させるための独創的なアイデアは、足りない」

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新返還6項目の内容と進捗状況

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