鈴木拡樹・独占インタビュー!「お箸を持ったままフリーズしてしまうこともあります(笑)」

鈴木拡樹・独占インタビュー!「お箸を持ったままフリーズしてしまうこともあります(笑)」

現在発売中の「デジタルTVガイド」3月号では、「大人もハマる! 冬の2大アニメNavi」を特集。その中で紹介している、この冬注目のアニメ「どろろ」(TOKYO MX、BS11ほか)で、主人公の一人・百鬼丸の声を演じている俳優・鈴木拡樹。今回は、誌面に載せきれなかったインタビューを余すことなく大公開!

── 放送中のアニメ「どろろ」は舞台化もされますが、鈴木さんは舞台でも百鬼丸を演じます。アニメと舞台のお話、どちらを先に聞いていたんですか?

「ほぼ同時だったんですけど、少し先に聞いていたのは舞台ですね。なので、2度驚きました(笑)。声優は、これまでにも挑戦したことがあったんですけれど、テレビアニメの声優としてレギュラーで出演させていただくのは初めて。いつかチャレンジしてみたいとは思っていましたが、実際にお話をいただいた時は、“まさか”という感じでした。声優の仕事はいまだに分からないことも多々あるので、先輩方にたくさんアドバイスをもらいながら、目下、収録中です」

── 畑違いのジャンルに飛び込むのは“ワクワク”と“怖さ”、どちらが大きいですか?

「先に立つのはやっぱり“怖さ”ですね。仕事として、責任を持ってのチャレンジですから。でも、『どういうスタンスでやるのが、自分にとって一番ためになるんだろう?』って考えると、やっぱり“楽しんでやること”だと思います。新しい現場だからこそ、楽しみつつもアンテナを張っていないといけないな、と」

──(声優の)先輩たちからはどんなアドバイスをもらいましたか?

「台本にどういうふうにメモをしているのか…などでしょうか。声優業と舞台業では、やっぱりメモの仕方が違うんですよね。中には、自分の演じるキャラクターが画面に寄って映るタイミングの時間をメモしていらっしゃる方もいました。なぜなら、アニメでは寄りの時こそ表情や口の動き、セリフをちゃんと合わせないと成立しないから。それを学んでからは、僕も寄りのタイミングをメモするようになりました」

── どろろ役の鈴木梨央さんとの共演はいかがですか?

「鈴木さんは完璧なので、隣で緊張してしまいました。そのせいかは分かりませんが、変な失敗もしてしまって…(苦笑)。アフレコの時は、画面のシーンに合わせて登場するキャラクターの声を担当する人がスッとマイクの前に移動するんですけど、鈴木さんと同じシーンの時に、僕も一緒に立ち上がってスッとマイクの前に行ったんです。でも実は、百鬼丸は一言も話さない場面で、『あ…(どろろのそばに)いるにはいるけど…うん』という感じで、そのまま黙って席に戻ったことがあって(笑)。後ろにいた皆さんからは特にツッコまれなかったけど、『いや、マイクの前に立ってるけどセリフないでしょ! うなずいて戻ったよ、この人!(笑)』って思っていたと思います。まぁ、“気持ちはそこにいたよ~!”ということで(笑)」

── 実際にアニメーションにのった自分の声を聞いて、どう思いました?

「アニメーションの映像と一緒になった自分の声を聞くのはほぼ初なので、そこはなんだか不思議な感覚がありますね。あと、あらためて最近のアニメはすごいなと思いました。海外のアニメも魅力的ですけど、日本のアニメはすごく細かいと思うんです。声を当てている声優さんの表現だけじゃなく、キャラクターの瞬き一つとっても繊細に表現されている。今作も、百鬼丸が言葉を発していない場面ほど、表情などに注目して見ていただきたいですね。感じ取ってもらう“情緒”がすごく深いんですよ。もし『最近アニメを見ていないな…』という方がいらしたら、ぜひ見てもらいたいです!」

── 幅広い年代の方が楽しめる内容ですもんね。

「はい。それこそ僕の親戚が『どろろ』の世代で、『すごいね!』って喜んでくれて。そして、それを聞いた僕の両親が『すごいアニメの作品で声をやるんだって?』って反応してくれたり。そういうふうに、『どろろ』のことを知らない親世代にも知ってもらえたらうれしいです」

── それにしても、本当にいろいろな面での“新発見”が多い現場なんですね。

「そうですね。初めてテレビアニメの声優として臨んだ作品がこの『どろろ』で本当に良かったなと思うんです。人間として未熟なところから始まっている百鬼丸と、声優としての歩き方が分からない状態から入った僕。お互いに、一歩一歩、知りながら成長していくという部分はリンクしていますし、だからこそ役づくりに生かせるのではないかな、と」

── 舞台「どろろ」は3月から公演が始まりますね。百鬼丸の動き方など、役づくりについてすでに考えていらっしゃいますか?

「はい。むしろ最初に考えました。アニメの百鬼丸は序盤から動作が人間とかけ離れていますが、舞台でもその動きを可能な限り再現したいと思っています」

──“両腕が剣”という百鬼丸の殺陣は独特なものになりそうですね。

「その部分はアニメを見ていて感じるところがたくさんあったので、積極的に取り入れていこうと思っているんです。例えば、戦う前の動き。百鬼丸は義手を外して仕込み刀を出す際に、毎回、肩の力を微妙にコントロールしているんです。そうすることで(義手の)腕が抜けやすくなるし、戦闘後に腕を回収しやすくもなる。そういう行動一つをとっても、百鬼丸の性格がすごく見えてきますし、そこまでアニメで再現されていることにも驚きました。アニメを通して彼の生きてきた人生観を感じることができるので、舞台でも同じように感じてもらうことが大事だなと思いますし、さらに、舞台ならではの面白みを出せていけるようにしたいです」

── 演出の西田大輔さんは、舞台「煉獄に笑う」(2017年)や「真・三國無双 官渡の戦い」(18年)などを手掛け、アクションシーンを得意とされている方でもありますね。

「“西田さんとアクションものをやる=動き続けるんだな”という感じです(笑)。立ち止まることはないんだろうなと、今から覚悟しています」

── 体力面も大変になってくると思いますが、舞台上で動き続けるために心掛けていることは?

「やっぱり“食べる”ことですかね。(公演中に)たくさん食べるようにしているのは“炭水化物”です。炭水化物を抜くダイエットがはやっている中でこれを言うのはあれですけど(笑)、食べないと全く動けなくなっちゃうので、そこは気を付けないと。自分は好き嫌いなく何でも食べられるので、そこは得だなと思います。ただ、あまりに動くことが多い舞台が続くと、食べること自体が苦行になってくる時があるんですよ。お箸を持ったままフリーズしてしまうこともありますね(笑)」

── 毎回、作品に入る前に行う“ルーティーン”のようなものはありますか?

「うーん、調べ事はよくしますね。原作のことはもちろん、時代背景を調べたり。“きっと役に立たないだろうなぁ”と思うようなことを調べるのも好きなんですけど、知っていると意外と現場で役立ったりするんですよね。本当は調べたことをノートにまとめた方がいいんだろうなぁ…と思いつつ(苦笑)。今回の『どろろ』は、(ほかの作品で)演じたことのある時代背景だったのでそこは飛ばしていますけど、自分が見たり読んだりしたことがある作品は、映画やアニメ、コミックをあらためて見直したりもします」

── そして、3月からは清原翔さんとダブル主演するドラマ「虫籠の錠前」(WOWOW)も始まります。舞台、アニメ、ドラマと大活躍ですが、その幅は今後も広げていきたいという願望はありますか?

「僕自身は常に“挑戦者”のスタンスです。しんどかったり大変なこともあるんですけど、やっぱり挑戦することは楽しいです。知らないことを知れるし、その知識が別のいろんな方面でも生きてくる。今はどんな仕事も楽しいですし、この“常に挑戦する”という気持ちを忘れちゃいけないなとも思います。舞台はもちろん、この『どろろ』の収録やドラマの撮影など、18年はすごく充実していたんです。19年もそうなればいいなと思いつつ、でももしも、仕事に充実を感じられなかったら、自ら進んで探しに行くべきだなって。最近は特に、『いつも何かにチャレンジしていないと、新しいものもやって来ない』と感じるようになりました。そしてそれは仕事だけではなく、プライベートでも言えることで…」

── プライベートでは、例えばどういうことに挑戦してみたいですか?

「先ほどもお話ししたように、よく調べものはするんですけど…その先の“動く”ということをあまりしないタイプなので、体を動かす趣味を作ってもいいかもな、と思ってるんですよね。乗馬…とか。いつか時代劇に出演する機会があったら役に立つかもしれませんし。『実は趣味程度にやっていて…』と言えるものがあったら、決まる役だってあるのかもしれない。それに、必ずしも仕事で役に立たなくても、どこかで別のところで生きてくる可能性はありますから!」

── では、19年は乗馬から始めてみますか!

「いや……きっちりと習い事にしてしまうと硬くなっちゃうと思うので、まずはフラッと行ってみる…程度のものから始めたいです(笑)」

── なるほど(笑)。でも、「お休みの日は家でゆっくりしたい」…ではないんですね。

「休んだら休んだで、特に何もせずに1日が終わる場合が多いので…(苦笑)。それに、『休みたいな』って思う時は大体、しっかり睡眠をとりたい時くらいなんですよ。それだったら、2連休あれば事足りるでしょ? そう考えると、働いている方がいいなって」

── あらためてお伺いしますが、鈴木さんの趣味は何ですか?

「ランニング…は、もう生活の一部になっているからなぁ。やっぱり、“気になったことを調べること”が趣味なのかもしれません。この前、神社へ初詣に行った際に、(神社の敷地内にあった)石碑などを見ていたらいろいろと調べたくなっちゃって。石碑に書いてあることを読みながら『これはどういう意味なんだろう?』って思ったらすぐに携帯電話で調べて、少し進むと今度は神様の名前が目について、『知らない神様だな…』と、また携帯を取り出して(笑)。初詣に行ったはずが、その日はいろいろと調べましたね(笑)」

── すごいですね(笑)。

「そうですか?(笑)。場所によっては、お稲荷さんだったり猿田彦神だったり、一つの神社の中に何カ所もお参りするところがあるじゃないですか。『あれ? どれにお参りすればいいの?』ってなった時に、すぐに調べちゃうんですよね(笑)」

── そういう気質も、役づくりにつながっているんでしょうね。

「確かに、この性格もちょっと役に立っているのかもしれないですね。だからこそ、調べていて楽しいんだと思います」

── ちなみに…神社でおみくじは引きましたか?

「それが、おみくじを引けなかったんですよ! 近所の神社へ初詣に行ったんですが、お参りした時間が遅かったみたいで、誰もいないという…。正月ぐらい誰かいるでしょ!と思ったんですけどね…(苦笑)。と言っても、(夜の)6~7時ですよ? 混んでるのかなぁって思ったら、誰ともすれ違いませんでした(笑)」

── それは残念でしたね(笑)。お正月、ご実家には帰省されましたか?

「お正月には帰りませんでしたが、昨年、公演があったのでその時に帰りました。でも舞台『どろろ』も大阪公演があるので、その時にまた帰れたらいいなと思っています」

── 最後に19年の抱負をお願いします。

「自身にとっては、アニメ『どろろ』の放送が始まり、主演させていただいた映画『刀剣乱舞』も公開されるなど、1月はすごく大事なターニングポイントになりました。できればもうちょっと(ほかの月に)分散してほしかったな…っていう思いも若干ありつつ(笑)、本当にドキドキする瞬間がいっぱいの年明けだったので、この緊張感を忘れずに、いい刺激を受けながら過ごせたらいいなと思います。去年に引き続き、何事にもチャレンジしたいです。そしてチャレンジするからには、何か一つでもつかんで帰れるように…。このインタビューで“楽しむ”という言葉を何度か言わせていただきましたが、その裏では結構もがいている部分もあります。もがきながら、何かを得られたらなと思います」

【アフレコ収録リポート】

アニメ「どろろ」のアフレコ現場に潜入! この日収録していたのは、物語中盤のクライマックスシーン。ブースの中に一人で立ってアフレコに臨む鈴木は、別部屋で編集作業を行う監督からの指示に対し、「はい」「はい、分かりました」と簡潔に、だが明るく弾んだ声で対応していく。また、「シーン218で一端余韻が落ち着いて、そこから219に行く感じで」「234のカットじりで(百鬼丸が)振り向く動きが入ります」など、秒単位での細かい指示が飛ぶと、すぐさま手に持っていた台本にメモを取る。さらに壁をつたって飛び跳ねるシーンや咆哮を上げて暴れだしそうになる場面の前には、自身も少しだけ肩や膝を上下に揺らして準備運動を。実際にアフレコ中には大きく体を揺らしながら、けれどマイクからは顔を離さず食らいつくように声を上げる姿がとても印象的だった。

声を失ったまま生きてきた百鬼丸が初めて自分の声を知り、言葉数が少しずつ増えていく。そんな百鬼丸のセリフだからこそ「はっ」「うっ」という短いセリフや、漏れ出る息遣いでさえも微妙なニュアンスを熟考して録音したい……現場からはそうした鈴木や監督陣の強い思いがひしひしと伝わってくる。中でも特に、この日のアフレコで慎重に収録されていた、物語のある重要なセリフでは、百鬼丸の心情に寄り添うように、事前に何度もさまざまな言い方を試していた。そして本番では、スタッフ陣も思わず切なくなってしまうような声が…! 監督も「うん、今のいい!」と絶賛した珠玉の声を、ぜひともお楽しみに。

【プロフィール】


鈴木拡樹(すずき ひろき)
1985年6月4日生まれ。大阪府出身。双子座。AB型。出演作は、「最遊記歌劇伝」シリーズ(2008年~)、舞台「弱虫ペダル」シリーズ(12年~)、舞台「刀剣乱舞」シリーズ(16年~)、「髑髏城の七人 Season月〈下弦の月〉」(17~18年)など多数。主演舞台「舞台PSYCHO‐PASS サイコパス Virtue and Vice‐」(東京・4月18日(木)~30日(火)/大阪・5月4日(土)~6日(月))を上演するほか、WOWOWオリジナルドラマ「虫籠の錠前」に出演予定。主演舞台「最遊記歌劇伝‐Darkness‐」(ヒューリックホール東京 6月6(木)~14日(金))を上演。 「映画刀剣乱舞」が公開中。

【番組情報】


「どろろ」
TOKYO MX 月曜 午後10:00~10:30
BS11 月曜 深夜0:30~1:00
時代劇専門チャンネル 金曜 深夜2:00~2:30

【公演情報】


舞台「どろろ」
<大阪>梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ 3月2日(土)~3日(日)
<東京>サンシャイン劇場 3月7日(木)~17日(日)
<福岡>ももちパレス 3月20日(水)
<三重>三重県文化会館大ホール 3月23日(土)

取材・文/松木智恵

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