これまでの連載では、パソコンでプログラミングするなら「Scratch(スクラッチ)」「Python(パイソン)」「JavaScript(ジャバスクリプト」などがいいのではないかと提案しました。では、こうしたプログラミング言語でプログラミングするには、何を用意して、どのようにはじめればよいのでしょうか。今回は、プログラミングに必要なソフトについて説明します。
Scratchならカンタン
プログラミングに、どんなソフトが必要なのかは、使うプログラミング言語によって異なります。プログラミング言語によっては、まったく何も準備しないではじめられるものもあります。
その典型的な例が、Scratchです。ScratchはWebブラウザで操作できるプログラミング環境なので、事前の準備が必要ありません(強いて言えばインターネットに接続されていることが必要というところでしょうか)。
Scratchをはじめるには、ブラウザで、次のURLにアクセスし、アカウントを作るだけです。本サイトでは「親子で楽しもう!Scratchゲームプログラミング」という連載があるので、こちらを見てもらえば、簡単な使い方はわかるはずです。
Scratch - Imagine, Program, Share
子ども向けプログラミングでScratchが流行っていますが、それはプログラミングが簡単なこともさることながら、「事前準備なしで、すぐに使える」というところも大きいです。
PythonやJavaScriptは前準備が必要
一方で、PythonやJavaScriptなどのコードプログラミングをはじめるのは、「プログラムを入力するソフト」や「変換や実行したりするソフト」が必要なので、少し複雑です。
連載の第1回目を思い出してください。プログラムは、次のようにしてアプリを作っています。
この流れから想像できるように、プログラミングには、次のソフトが必要です。
(1)プログラムを入力するソフト
コードプログラミングでは、プログラムの命令をキーボードから文字として入力します。ですから、文字入力できるソフトが必要。文字入力できるソフトは「テキストエディタ」と呼ばれ、文字を入力するだけのソフトなので、どんなプログラミング言語でも同じものが使えます。
(2)変換したり実行したりするソフト
(1)で入力したプログラムは、ただの文字です。これを変換したり実行したりするための開発ツールが必要です。何が必要なのかはプログラミング言語によって違います。たとえばPythonの場合は、次のようなサイトからダウンロードしてインストールします。
JavaScriptの場合は、Webブラウザで実行したり、次のサイトからダウンロードできるNode.jsというプログラムをダウンロードしてインストールしたりします。
他にもたくさんプログラミング言語があり、言語ごとに、何を用意すべきか、そして、どうやってインストールすればよいのかが違います。
入力から実行まで完結する統合開発環境
こうした、プログラミングをはじめるためのソフトを一式揃えてインストールするのは、複雑で時間のかかる作業です。正直プロのプログラマーにとっても大変です。そうした理由から、プログラミング言語によっては、1本のソフトをインストールすれば一式揃ってすぐに使えるようになるソフトも提供されています。そうしたソフトは「統合開発ソフト」や「IDE(Integrated Development Environment)」などと呼ばれています。統合開発ソフトを使うと、プログラムの入力から実行まで、すぐに実現できます。
たとえばPythonには「IDLE」という統合開発環境が付いていて(これは からダウンロードしてインストールすると自動で入ります)、プログラムを入力したあと[Run]メニューから操作するだけで、簡単に実行できます。ほかにも、統合開発環境として有名なソフトとしては、オラクル社が提供しているNetBeansやマイクロソフト社のVisual Studioなどもあります。
まず1行入力して実行してみよう
統合開発環境というものがあるといっても、コードプログラミングは事前のソフトの準備が必要なので、「プログラムを入力して実行する」というところまでが、第一の障壁となりがちです。
ですから、これからプログラミングをはじめるときは、書店でまず「手順通りにやれば、プログラムを入力して実行できる」というところまでを、できるだけ丁寧に解説した書籍などを用意しましょう(このとき、使いたいプログラミング言語のものを選ぶことは言うまでもありません)。そして、本当に、その通りにやってみて、まず「実行できた」というところまでを体験してください。本ではなく動画で学びたい人は、「ドットインストール( )」などのサイトを参考にするのもよいでしょう。
最初のプログラムは、たいていが「画面にHello Worldと表示する」というサンプルからはじまることが多いので、「ハローワールドプログラム」などと呼ばれたりします。ともかく、ハローワールドプログラムを入力して実行できること、これが一歩なのです。
コラム なんで「ハローワールド」なの?
これは歴史的な理由で、C言語の著名な入門書「プログラミング言語C」の最初の例題が、「hello,world」と表示するプログラムであったことに由来しています。
プログラミングに必要な参考書は全部で三種類
このように、ひとまず、「本に書かれていることをなぞれば、実行できる」という「お手本」となる参考書を買うとよいとお話しましたが、その後は、どのようにすればいいのでしょうか。
次に手に入れたいのは、次の2種類の参考書です。
(A)プログラミング文法の基礎
ひとつはプログラミング言語の文法に関する本です。そもそもどのような文法が書かなければならないのか、何度か同じ処理を繰り返したいときは、どのように書けばいいのか。エラーが発生したときにはどうすれがよいのかなどが書かれた本です。これは英語で言うところの、文法書に相当します。たとえば、先に示したハローワールドのPythonのプログラムは、次の通りです。
print("Hello World")
ここでいう文法の基礎の本とは、「文字全体は"で囲む」というような、書き方の決まりやルールを習得するための本です。プログラミング言語によっては「行の最後はセミコロンで終わる」などのルールがある言語もあるので、そうしたルールを覚えることは、プログラミングできるようになるための第一歩とも言えます。
(B)機能について書かれた本(リファレンス)
次に必要になるのが、命令の意味や機能についての本です。先のハローワールドの例であれば、「print」という機能が、どのような機能をもつかについてです。種明かしをすると、printという機能は、「画面に文字を表示する」という機能があるのですが、これは、リファレンスマニュアルと呼ばれるもので調べることができます。
リファレンスマニュアルはインターネットにあるので、それを参考にするとよいでしょう。たとえば、Pythonの場合は、以下からリファレンスを見ることができます。
Python 言語リファレンス — Python 3.6.5 ドキュメント
しかし専門的で分量も多いので、慣れないうちはわかりにくいと思います。ですから、最初のうちはよく使う機能だけが抜粋され、サンプルなども含めて記載された参考書などが役に立つはずです。
マネて改良しての繰り返しで習得していく
プログラミングは、最初から複雑なことをしようとすると、まず挫折します。最初にやってみるべきことは、「本に書かれていることを、そのまま入力して実行すること」です。こうした作業を馬鹿にせずに、まずやってみて体験をするが、とても大事。
「動くことがわかっているもので、ひとまず試す」、それから自分なりに改良するというのが、初心者のみならず、プロの世界でも、プログラミングでなにか新しいことをはじめるときの基本中の基本です。最初から、自分のやりたいことをやると、どこが間違っているのかわからないからです。まずは、確実に動くものを実際に参考として動かしてみる。そして、そこから少しずつ改良を加えていくのが鉄則です。
このような意味で言えば、選ぶべき参考書は、「自分が作りたいものに似ているもの」や「興味があるもの」のサンプルが掲載されているものを選ぶべきです。そうしないとたいくつでなかなか学習も進みません。
これまでの記事
子どもがはじめてでも使えるオススメ言語はこれ!「Scratch」「Python」「JavaScript」【プログラミング言語のえらびかた】 - VaLEd.press(バレッドプレス)
プログラミング言語がたくさんあるのはなぜ?【プログラミング言語のえらびかた】 - VaLEd.press(バレッドプレス)