学生百人一首

 インスタやツイッターに夢中の友人。ねえ早く食べよう…口に出せない抗議。〈ここじゃない/色んな角度で撮るカノジョ/冷めてくワタシのご飯と気持ち〉東京・高3。〈携帯を見つめてばかりの若者よ/私の祖母に席をゆずって〉と東京の中2は怒りの一首を▲ケータイやスマホの普及と一緒に成長してきた世代だ。健全ないらだちが新鮮に映る。東洋大が主催する「現代学生百人一首」、今年の入選作が先日発表された▲〈まだ見えぬ私はどこだと夢探し空に透かした白紙の希望〉栃木・高2。誰もが悩む。でも、見えない未来は可能性の裏返し。広島の看護学生は〈三十路過ぎ/化粧禁止で学びます/今日は誰にも会いませんように〉-こちらは再挑戦の途上に▲佐世保市立祇園中1年の原幸生さんは〈川の中すけた水中/光差し小魚たちが光っているよ〉と地元の清流を詠んだ。同市立清水中3年の御厨憲人さんは〈学問の神様という道真に/来年のためしっかり拝む〉-いよいよラストスパートだ▲県内からの応募数2882首は都道府県別で6番目。5 ・ 7 ・ 5…と指を折りつつ内面と向き合う姿を想像してみる▲〈「平成」とならずに混乱三十年/次の時代こそ「平成」なるか〉-平成生まれに共通する思いだろう。新時代への願いや決意もきっと。(智)

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