「新たな領域 切り開いて」 ノーベル医学生理学賞 大隅氏が講演 佐世保高専

 細胞内の不要なタンパク質をリサイクルするオートファジー(自食作用)を解明し2016年にノーベル医学生理学賞を受賞した大隅良典・東京工業大栄誉教授は1月31日、佐世保市沖新町の佐世保工業高等専門学校(佐世保高専)で講演。研究人生を振り返り「私たちが解き明かしたことは次の世代の出発点になる。新たな領域を切り開くチャレンジをしてほしい」と呼び掛けた。
 大隅栄誉教授はオートファジーの研究について、当時は注目されなかった酵母の液胞の研究がきっかけだったことを説明。「人が寄ってたかっていることより、自分で発見できることがあると思い、液胞に興味を持った」と明かした。その上で「細胞で自分のタンパク質をどのように壊すのかが単純に知りたかった。多くの論文が出る領域に成長し、ありがたくうれしい」と振り返った。
 社会への貢献度を気にしたり、時代に合った研究テーマを選ぼうとしたりする若い研究者の風潮も指摘。「何もないところから領域を立ち上げるところが科学の醍醐味(だいごみ)。10年、20年と取り組む中で考える視点も持ってほしい」と訴えた。
 講演会は大隅栄誉教授の父親が佐世保高専の校長を務めていたことから、来県に合わせて実現。全校生徒ら約890人が聴講した。

「何もないところから立ち上げることが科学の醍醐味」と訴える大隅栄誉教授=佐世保市、佐世保高専

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