後輩が化粧まわしを贈呈 川崎出身・友風関 「頂点へ共に」

 角界の頂点を目指す郷土の星を応援しようと、母校の後輩たちが一肌脱いだ。県立向の岡工業高校(川崎市多摩区)の生徒らが募金を集め、化粧まわしを作製。川崎区出身で昨年11月に十両優勝を果たした友風勇太関(24)=尾車部屋、本名・南友太=を招き、31日に贈呈式を開いた。「これ以上、幸せなことはない」と感謝する関取は「これを着けて負けるわけにはいかない」。

 身長183センチ、体重180キロの男が姿を現すと、体育館を埋めた約700人の生徒や保護者から歓声が沸き上がった。生徒代表が白い布を外し、特注の化粧まわしをお披露目。校旗の色と同じモスグリーンを基調に、中央には校章と同じ梅の花と「向工」の文字があしらわれていた。

 同校によると、贈呈計画は新十両となった昨年10月ごろに浮上。相撲部や教員を中心に機運が高まった。11月の文化祭では生徒会が早速行動に移し、募金箱を手に来校者や在校生に協力を呼び掛けた。卒業生やかつて在籍していた教職員にも寄付をお願いし、短期間で目標金額の150万円をクリアした。

 募金活動が進む中、友風関は昨年の11月場所で新十両優勝を果たした。今年1月の初場所では一時黒星が先行しながら、9日目から7連勝を飾り、巻き返しに成功。10勝5敗の好成績を収め、来場所は新入幕が決定的となっている。

 番付の階段を駆け上がるさなかでの凱旋(がいせん)に、「胸を張って母校に帰ってこられて良かった」と友風関。新十両優勝の力士は1年以内に三役まで上り詰める“法則”があり、「とてつもないプレッシャーだが、嫌いじゃない。観客が沸くような相撲を取れば、結果は付いてくる」と話した。

 場所中には相撲部の清田英彦監督(39)に電話で相談していたことも明かした。「もうしんどいと、話を聞いてもらった」と笑う。清田監督は「人柄ですよね。彼を悪く言う人間を見たことがない」と評価。今でも時間があれば母校に姿を見せ、大量のサプリメントやバナナなどを差し入れて帰るという。

 高校時代には全国選抜大会で準優勝するなど、実績を残した友風関は「基礎を一から学んだ」と当時を回顧。後輩たちには「部活も勉強も一生懸命頑張り、青春を謳歌(おうか)して」と語り掛けた。

 相撲部の松村将伍さん(3年)は「テレビで母校の化粧まわしが見られると思うとうれしいし、先輩が誇らしい」。竹崎尚人さん(2年)は「ムカコー相撲部の象徴。早く金星を」と大きな期待を寄せた。

贈呈された化粧まわしを前に、抱負を語る友風関=川崎市多摩区の県立向の岡工業高校

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