立春

 昨日の午後。雨の中、なかなか来ないバスを待っていると強く温かな風が南から吹いて、雨傘がおちょこになってしまった。しかし、残念、この風は「春一番」とは呼んであげられないフライング気味の南風。春一番はきょうの「立春」を過ぎて吹く風をいう▲暦には春が来た。平戸の子泣き相撲、小浜では長い長い恵方巻きチャレンジ…けさの地方版は各地の節分行事が楽しい。〈春立つと古き言葉の韻(ひびき)よし〉後藤夜半。〈春立つや誰も人よりさきへ起き〉上島鬼貫▲そんな浮き立つ気分とは裏腹に、長崎市の人口に長い「冬」が続いていることを数日前の紙面が伝えていた。総務省が公表した2018年の「日本人の人口移動報告」によると、長崎市からの転出超過は2376人。市町村別では全国でワースト1位▲この春もまた、大勢の若者が市外へ、県外へと新たな一歩を踏み出していくだろう。進学や就職に伴う若年層の転出に加え、18年は30歳代後半の転勤者も目立ったという▲転出人口の多さは「ふるさとは長崎」と思ってくれる人の多さでもある-とやせ我慢めいた理屈を思いついた。ただ、強がりや負け惜しみで人口流出は止まらない▲新たな知恵やアイデアを、と無い物ねだりは半ば承知で書かなければならない。今年の春は選挙の春でもある。(智)

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