中国の伝統を照らす

 「喜」の文字が横に二つ並んだ祝いの張り紙を、至る所に飾る。新郎新婦の前のテーブルには、ろうそくと鏡、湯がいたそうめんを5皿並べる。ずっと前、中国の伝統的な結婚式の流儀を長崎の華僑3世の人に伺ったことがある▲新郎新婦は線香2本のうち1本を先祖に、もう1本を天地の神にささげたりと、細かい作法が付いて回る。事細かいのは正月も盆も同じで、受け継ぐその人は「先輩に教わったことを一つ一つ帳面に書き付けて覚えた」と、ご苦労を語っていた▲中国の風習が、長崎で生まれ育った人たちによって、ここ長崎で伝えられていく。「古い付き合い」あってこそ、なし得ることに違いない▲長崎ランタンフェスティバルがきょう開幕する。長崎市のまちなかを彩る1万5千個のランタンやオブジェは、所狭しと並ぶ“密集度”といい、その精巧な作りといい、中国でもそう見られない伝統が詰まっていると聞く▲春節(旧正月)の大型連休で国外旅行に出る中国人は実に700万人近くに上ると、先ごろの紙面にある。日本は2番目に人気の渡航先らしい。長崎にも数多く押し寄せることだろう▲中国人までも「中国らしさ」に目を奪われる。そんな妙味たっぷりの祭りに成長した。街に映える赤や黄色のほのかな光は、いにしえの中国も照らし出す。(徹)

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