「防災とボランティアのつどい in 愛媛」レポート

内閣府・防災推進国民会議主催、愛媛県共催による「防災とボランティアの集い in 愛媛」が1月27日(日)、松山市のひめぎんホール(松山市道後2)で開催された。近年発生した多くの災害で被災者支援などボランティア活動に関わった人たちや、現在防災・復興活動に携わる人たち、今後の参加に興味を持つ人たちなどが一堂に会し、これまでの歩みを振り返りながら、災害時の連携・協働の取り組みを考える機会として実施されたもので、300名近い参加者が熱心に耳を傾けた。

開会挨拶には、愛媛県出身の山本順三内閣府特命担当大臣(防災)と、中村時広愛媛県知事が登壇。

山本順三 内閣府特命担当大臣

山本大臣「災害の種類や発生場所の地域特性によって復旧、復興のやり方にも違いが出る。的確な対応を進めるために普段から情報の共有が重要になる。この会を通じて得た知見を地元に持ち帰り、防災意識の高まりに繋げて欲しい」

中村時広 愛媛県知事

中村知事「西日本豪雨災害に対応する中で、被災地では時間の経過で異なるニーズが発生し、支援とのマッチングの難しさを感じた。正確な情報の把握と発信が重要で、地域の防災力を高めるため、既に県が推進している防災士資格取得者の育成にも今後、力を入れていきたい」

防災における行政・NPO・ボランティア三者連携のフロンティア

続く「防災における行政・NPO・ボランティア三者連携のフロンティア」をテーマとしたセッション(全国セッション)では、さまざまな課題や問題提起、情報共有が行われた。

・モデレーター:
栗田暢之氏 全国災害ボランティア支援団体ネットワーク JVOAD代表理事
・報告者:
佐谷説子氏 内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(普及啓発・連携担当)、
高橋良太氏 全国社会福祉協議会地域福祉課長全国ボランティア・市民活動振興センター所長
・パネリスト:
馬越祐希氏 愛媛県保健福祉部社会福祉医療局保健福祉課長、
詩叶純子氏 岡山NPOセンター災害支援担当、
監田口博史氏 岐阜県健康福祉部地域福祉課福祉人材対策、
樋口務氏 くまもと災害ボランティア団体ネットワーク(KVOAD)代表

 

全国セッション

全国セッション

サマリー
① 「防災とボランティアをめぐるこれまでの流れ」
〇災害ボランティアに関する近年の動き
〇なぜ社会福祉協議会が災害ボランティアセンターを運営してきたか
〇災害ボランティアセンターで行われていること
〇東日本大震災初動期の課題
〇全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)の設立
〇熊本地震における情報共有会議
〇行政・ボランティア・NPOによる三者連携の姿(平成30年7月豪雨)
〇同豪雨災害における情報共有会議(全国・県)

②「今後の課題、取り組むべきこと」
〇災害ボランティア・災害ボランティアセンターの課題
〇都道府県における行政・NPO・ボランティアの連携体の課題
〇三者連携に向けた平時からの取り組み

③パネリストからの各地の状況解説
〇平成30年豪雨災害の愛媛県での三者連携の取り組み成果と課題
〇連携の取り組み先進地としての岡山県の事例
〇同7月豪雨災害を踏まえた岐阜県での円滑な災害ボランティア受け入れ体制整備について
〇熊本地震における三者連携(連携会議での継続した情報共有と、その成果としての時系列課題記録のWeb上でのデータベース公開)

また、「地域内で互いの立場や役割を把握しながら関係者間の信頼を醸成し、地域特性に合わせた連携・協働の形を模索すること」「今後予想される広域災害への対応のため都道府県を超えた横の連携や全国レベルでの連携体制の強化も必要」とした。
各地で進む様々な取り組みに参加者は興味深く耳を傾けていた。

 

災害復興法学と知識の備えと防災教育

続いて「災害復興法学」を提唱する弁護士の岡本正氏(銀座パートナーズ法律事務所)が登壇。

岡本 正氏

「被災者支援と多職種連携 ――災害復興法学と知識の備えと防災教育」をテーマに講演し、東日本大震災時に聞き取りした4万件に上る法律相談をデータベース化した情報から、被災後の生活再建に必要な法的支援制度の整備を推進する自身の活動を紹介しながら、将来起こりうる災害へ「知識」の習得で備えることの重要性を説いた。

 

愛媛の防災

愛媛県における「防災とボランティア」のセッション(愛媛セッション)では、NPO法人えひめリソースセンター南予担当理事の木村謙児氏をモデレータに、地元愛媛から五人の発表者が登壇。

U.grandma(うわじまグランマ)代表の松島陽子氏は、宇和島市での炊き出しコーディネーター活動や支援物資の仕分け管理、親子イベント(心ケア)を通じて感じた、地域内での密な連携や、災害ガイドブックの作成の必要性を語った。

NPO法人シルミルのむら副理事長の山口聡子氏は、地元西予市で即時性の高いニーズの把握と支援の実行を通じた成果と課題を報告。

JAえひめ南吉田営農センターの清家嗣雄氏は、豪雨災害からの復旧に向けた「みかんボランティア」の取り組みのテーマで、NPO団体と協力して行った被災後の宇和島市での農業支援ボランティア事業をJAが引き継ぎ早期の復興を目指して活動する現在の動きを紹介。

愛媛セッション

NPO法人自立生活センター松山(ゆめ風ネットまつやま)の須賀智哉氏は、阪神淡路大震災をきっかけに設立されたゆめ風基金を基に東日本大震災、熊本地震など数多くの災害で展開した障がい者支援と、今回の豪雨災害での支援を紹介。災害時に課題となりうる障がい者支援に特化した被災地障がい者支援センター立ち上げの重要性についてもその意義を訴えた。

具体的実例と課題解決に向けた密度の高い報告が続き、参加者それぞれが充実した成果を得て同会は終了。内閣府大臣官房審議官(防災担当)米澤健氏の閉会挨拶の後、連携・協働ネットワーキング・団体間でのマッチングも最後に行われた。

 

写真・文 吉良賢二

© 一般社団法人助けあいジャパン