小さくて大きなDVDアルバムと呼びたい一作だ。惜しまれつつこの世を去ったオーストラリア出身のミュージシャン、デヴィッド・アレンと、ロンドン在住の日本人ミュージシャン、ユミ・ハラ、そしてイギリスの前衛ロックバンド「ヘンリー・カウ」を中心とした多様な活動で知られるクリス・カトラーの3名からなるユニット「YOU ME&US」による2013年のジャパンツアーの模様が収録されている。
現在筆者はこのコラムのDVDのほぼすべてを、リリース情報をもとにインターネットで購入している。当然、手元に届くまで現物を目にしてはいないのだが、今回はとくに、ワクワクしてしまった。予想外に薄い封書のなかにあった、小さな透明の封筒。サイケデリックな雰囲気をまとった“ゆるイラスト”のジャケット。いわゆる商業化された音楽とは一線を画す作品であることが、その佇まいからすでにビシビシ伝わってきた。
最初、ほとんどインターネット上にも情報が見つけられず、前情報なしに音楽と出会えたのもよかった。再生してみると、そこに現れたのはスポットライトを浴びて佇む白髪の男性。そして繰り出される空間がぐにゃりとゆがむような、足元がおぼつかなくなるようなサウンドに思わずのけぞった。そうか、DVDとは、いろんな音楽の部屋に通じる一筋の道なのかもしれない。デヴィッドの逝去がつくづく惜しまれるが、私はこのDVDリリースのおかげでまた新しい扉を開けた、そんな高揚感が残る作品だった。
（Bonobo’s Ark Records・1000円＋税）＝玉木美企子
