第七十七回「服を着ていることが恥ずかしいと思うなんて」

こういう職業だからか分かりませんが、よく自分の人生を振り返るというか、「どんな子ども時代を過ごしたか?」みたいな話を聞かれることが多いです。

なんなら振り返りすぎて逆にしんどくなることが多いですね。

人生っていうものは適度に振り返るほうがいいなと個人的には思います。

話題が少し変わりますが、自分のことを話したい人は世の中にびっくりするほどたくさんいます。何に向かってプレゼンしているのか? と思うほどに隙あらば自分語りしてくる人、いますよね。

我々みたいな人間は承認欲求が服を着て歩いているような職業なので常に世界にアピールしていますが、なんか、音楽ネタを使って「自分を構成する9枚」とかって自分語りしてる人とかいますね。その中で「アーバンギャルドとか入れてる自分、変わってるでしょ?」アピールにうちのバンドとか使われてることがあるのですけど、やってる本人は変わってることは何ひとつやってるつもりがないので、そのように言われるといつも不思議な気持ちになります(笑)。

本人はめちゃくちゃ王道の売れ線POPSを作ってるつもりなんですよ(苦笑)。もちろんそんなつもりで選んでる人のほうが少ないとは思っているんですけども。

人がいればその数だけその人を構成したものが世の中には溢れています。

人はひとつだけの要素で出来上がるものではないから、一人の人をつくるのに1,000の要素があるとしたら、要素だけで膨大な数の情報量が溢れているということですよね。

そんななか唐突に自分語りを始めますが、私を構成するもののひとつとして必ず入ってくるのが、幼少の頃から中学生まで習っていたクラシックバレエですね。

バレエは6歳の時に習い始めました。厳密に言うと6歳になる年の5歳の時なのかな。

母に今からバレエのレッスンの見学に行きます、と言われ、おでかけ用のワンピースを着てレッスン場へ向かいました。

レオタード姿でレッスンする歳の近い女の子たちを見て、私はとても恥ずかしい気分になったのを覚えています。なぜなら、その子たちはレオタードという限りなく裸に近い恰好でいるのに、おしゃれなワンピースを着てレッスン場の隅で椅子に座って見学している自分はとても場違いな感じがしたからです。決していやらしい気持ちになって恥ずかしかったとかではなく(笑)、普通の服を着ている自分に違和感を覚えたからです。

生まれて初めてです。服を着ていることが恥ずかしいと思うなんて。

その感覚こそが今の私をつくっているなと感じる時があります。

以来、7、8年間、私の生活の中で「裸に近い恰好」をする時間が増えました。

レオタードというものは非常に残酷で、その人の長所や欠点を隠すことができません。

長所が欠点になる、ということを知ったのもこの頃でした。

皆さんご存知のように(?)、私は脚が長いです。そして形がとても良い脚をしています。

バレエの先生というのは表現の達人でもありますから、自分の感じたものを素直に表現してくれます。つまり、こういうことです。

「容子ちゃんは脚が長くてスタイルがとても良いね!」

この言葉が他のレッスン生の、特にスタイルがあんまり良くないと感じている子たちの心にどれだけの劣等感を与えたでしょうか。

今でこそ褒められると伸びると思い、誰よりも優れていると思っている私も、当時、いたいけな少女の頃はそんなに目立ちたいと思わない、いや、どちらかと言うとひっそり暮らしたいタイプでしたので、このように名指しで褒められると居心地が非常に悪く、また他のレッスン生からの嫉妬の視線が痛かったです。

「どうにかして目立たないように過ごそう」

そう思ってもレオタードとレッスン場の全身鏡は残酷でした。

なんと、このスタイルだと上手くても下手でも、何をしても目立ってしまうのです!

そして他のレッスン生からついに言われてしまいます。「あいつ調子に乗ってる」

さぁ、田舎の一バレエ少女・容子はこの後どうやってレッスン生たちの嫉妬に立ち向かうのか!? 文字数が来てしまったので続編は来月!

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