海外ボランティア派遣5年 小川工務店 会社挙げ支援

 佐世保市吉岡町の小川工務店(小川寛社長)が取り組む社員の海外ボランティア派遣が5年目を迎えた。国際協力機構(JICA)のボランティアなどとして途上国で活動。社員はコミュニケーション力や積極性を磨いている。小川社長は「社員が成長するための活動にしたい」と熱意を燃やす。
 取り組みは2015年に始めた。企業とJICAが連携して青年海外協力隊員などを派遣する制度を九州で初めて利用。住宅設備の技術者をフィジーに送った。これとは別に、気軽に海外経験を積めるように、マレーシアでホームステイをして植林などに取り組む約1週間の活動も企画。これまでにJICAボランティアに2人、マレーシアに9人を送り出した。
 小川社長も1985年に父親が経営していた同社を休職。約3年間、青年海外協力隊員としてケニアの市役所に勤めた。建築士として診療所や小学校の建設に携わるうちに“幸せ”の意味に気付いた。家族で過ごす時間を大切にしたり、困っている人がいれば食事に誘ったりする人々。「物の豊かさだけが幸せではないと分かった」
 入社4年目の大塚麻実さん(26)は、セネガルに2年間滞在し、1月に帰国した。青年海外協力隊員の活動は夢だった。現地の大学で日本語を教える充実感を覚えた一方で、周囲の行動に驚くこともあった。「盗まれたと思った自分の持ち物を同僚が使っていた。声を掛けると『借りた』と言われた。勝手に解釈をする前に話をすればわかり合えると気付いた」と大塚さん。小川社長も「客や同僚と今まで以上にうまく接し、困難なことにも臆せず向き合うようになった」と成長ぶりに笑顔を見せる。
 休職して海外経験を積む社会人を応援する職場は少ない。本年度から、JICAのボランティアを派遣する企業が人件費の支援を受けられる制度は廃止。取り巻く状況は厳しくなっている。それでも小川社長は活動の継続に意欲を見せる。「ほかの社員の視野を広げ、刺激を与える機会にもなる。志がある人は会社を挙げて支援したい」

「海外ボランティアで社員の成長を後押ししたい」と話す小川社長(左)と大塚さん=佐世保市、小川工務店
日本語のサークルで習字を教える大塚さん=セネガル、ISM大(2018年8月、大塚さん提供)

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