【平成の長崎】長崎がんばらんば国体第4日 相撲 大黒柱・松永 豪快に決める 平成26(2014)年

 得意の左四つから相手の体を持ち上げる盤石の形。豪快につり出すと、大歓声を浴びながら、中堅松永(猶興館高教)は土俵の上で顔をくしゃくしゃにして、ほえた。相撲成年団体決勝。チーム全員が公言してきた「地元国体優勝」を決めたのは、やはり、2度のアマチュア横綱を誇る大黒柱だった。
 覚悟を決めて土俵に上がった。前日の予選1回戦、相手の頭で左目の下を強打した。予選突破を決めた後に受けた診断の結果は「眼窩(がんか)底骨折。絶対安静」。大会途中での選手交代は規定上不可。欠場すれば、中堅戦は不戦敗となり、長崎は先鋒(せんぽう)野口(生月中教)、大将高橋(長崎鶴洋高職)の2人で決勝トーナメントを戦わなければならない。「自己責任で出る」。そう決めた。
 骨折は米倉監督(平戸市振興公社)だけに打ち明けた。野口と高橋には、2人が気負わないでいいように「ただの打撲」と伝えた。気にならないわけはない。ただ、集中することで意識の外に追いやった。準決勝の秋田戦は、野口が敗れて後がない状況になったが、動じずに快勝して大将に回した。「絶対に落とせない」。そんな決意で予選から一人全勝した。
 勝利の瞬間は何を叫んだか覚えていない。ただ、ただ、地元平戸での優勝が、同じ目標に向かって稽古してきた仲間と、支えてくれた多くの人たちが喜んでくれることがうれしかった。土俵を下りて野口と抱き合う。180センチ、140キロの屈強な男の目に、感極まって涙がにじんだ。 (平成26年10月16日付長崎新聞より)
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【平成の長崎】は長崎県内の平成30年間を写真で振り返る特別企画です。

【相撲成年団体決勝、富山-長崎】長崎の中堅松永(猶興館高教)が豪快につり出して優勝を決める=平戸市、平戸文化センター

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