NYで楽しむ、オーケストラ音楽の基礎的な楽しみ方 大都会に響くオーケストラ①

未経験でも大丈夫!

オーケストラ生鑑賞のススメ全米のオーケストラを支援する団体「リーグ・オブ・アメリカン・オーケストラズ」の2人に、「超」初心者の目線から、オーケストラの魅力を聞いてみた。

「オーケストラの魅力は、実にさまざまな感情を、聴き手に『語り掛けて』くることです」

そう語るのは、米国のオーケストラを支援する団体「リーグ・オブ・アメリカン・オーケストラズ(LAO)」のマーケティング担当、セレステ・ウルブルスキーさん。

セレステ・ウルブルスキーさん「リーグ・オブ・アメリカン・オーケストラズ」マーケティング・コミュニケーション部門副部長

「約100人の演奏者が参加するオーケストラの音色はダイナミックで、没入感があります。日々の生活でうれしかった記憶、悲しかった記憶を思い起こさせたり、逆に日常を忘れさせて、新しい世界に誘う力がある」

レシェル・シュロッサーさん 「リーグ・オブ・アメリカン・オーケストラズ」メディア・コミュニケーション部門ディレクター 全米各地で活動する2000以上のオーケストラが加盟するネットワーク団体。 League of American Orchestras(americanorchestras.org)

LAO広報担当のレシェル・シュロッサーさんは、「テロ事件や、著名人の暗殺、そしてベルリンの壁の崩壊など歴史的な出来事があったとき、多くのオーケストラコンサートが開催されました」と振り返る。「力強い音楽に、人々の悲しみを癒やすパワーがあるからでしょう」

ちなみに昨年、英国の医師らが「音楽やアートには心身の健康を促進する効果がある」という内容の論文を発表している(※)。オーケストラの音が人々を救うという考えは、的を得ていると言えよう。

肩の力を抜いて楽しむ

ところで、「オーケストラ」は単純に「管弦楽団」(または管弦楽)を指す言葉だ。「オーケストラの音楽=クラシック音楽」と考えていた人もいるのでは?

「音楽ジャンルとして堅苦しいものではなく、むしろコンスタントにトレンドを追い掛け、変化しています。ブルースやポップス、ラップさえも取り入れますよ!」(セレステさん)

サブカルチャーとの融合も顕著で、近年はコンサートの題目としてテレビゲーム音楽や映画テーマ曲が人気だそうだ。

「演奏場所もさまざまで、小さなライブハウスやパブの片隅、公園でカジュアルに演奏するオーケストラもいます。コンサートホールの公演でも、ジーンズにTシャツの格好で問題ないことが多いですよ。身構えずに聴きに行ってくださいね」(レシェルさん)

NYで聴くメリット

「ニューヨークでは、さまざまなバックグラウンドを持つ音楽家が、世界中から訪れます。この街は、新しいオーケストラや若き才能に出会うのに、ぴったりだと思います」(レシェルさん)

ジュリアード音楽院をはじめとした音楽教育も充実しており、学生向けのチケット割引も充実。音楽学校生による無料コンサートも多い。

さらにLAOの2人は、当地でのプレミア(初演作品)コンサートの多さも指摘。プレミアでは作曲家本人が、演奏後に舞台に登壇することが少なくない。これは大都市ならでは!

鑑賞ではここに注目!

生演奏を最大限に楽しむポイントとして2人が挙げたのは、オーケストラの「動き」を見ること。

「一つの楽曲の中で、主役となる楽器がどんどんと入れ替わっていきます」とレシェルさん。「それぞれのパートの演奏者たちが、見せ場でどのように動いているかを間近で見れるのは、コンサートならではです」

(※)スミソニアン誌18年11月8日付記事「British Doctors May Soon Prescribe Art, Music, Dance, Singing Lessons 」より

ベートーベンに注目

オーケストラの多くは、それぞれの「シーズン」中にコンサートを多数催す。シーズンごとにテーマや特別プログラムがあるのだが、LAOの2人が2019-20年シーズンに注目するのは、ルートウィヒ・バン・ベートーベンの作品。2020年に生誕250周年という大きな節目を迎えるため、彼の楽曲の公演プログラムを組むオーケストラが多いのではと予測している。有名曲を多く持つだけに、オーケストラデビューには最適なシーズンになりそう!

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