人口予測

 「未来予測で一番確かなことは何ですか」と編集者に問われ、「人口予測ですよ」と答えたのが執筆のきっかけだったという▲先日死去した作家、堺屋太一さんが1976年に発表した代表作「団塊の世代」。戦後間もない47~49年のベビーブームで生まれた人々を主人公に、後年の日本の人口減少を見通すような近未来を描いた▲この世代は、800万人を超える多くの人口によって戦後の日本社会を動かす力となった。農村から都市への人口移動の主役となり、高度経済成長を支えた。80年代後半のバブル景気は、40代だった彼ら彼女らの旺盛な消費意欲あってこそだった▲だが、その下の世代では出生率低下が進んでいった。団塊世代が年を取るにつれ、少子高齢化が深刻な社会問題として浮かび上がる。多くの高齢者を少ない現役世代が医療や福祉など多くの場面で支えねばならなくなった▲2008年の1億2808万人をピークに人口減少局面に入った日本。国立社会保障・人口問題研究所は45年の人口が1億642万人に落ち込むと予測する。本県は98万人と、15年から3割近く減る見通しだ▲それを少しでも押しとどめようと、国や自治体は必死に多彩な施策を打ち出す。それがどう実を結ぶのか。未来の人口予測にどれほどあらがうことができるだろうか。(泉)

© 株式会社長崎新聞社