【MLB】菊池雄星が適応段階で示す力量 初めて打者と対峙「力むのは別に悪くない」

マリナーズ・菊池雄星【写真:田口有史】

「ライブBP」に初めて登板「真っ直ぐが思いのほかいいボールが行っていた」

 マリナーズの菊池雄星投手が19日(日本時間20日)、スプリングトレーニングで初めて実戦形式の投球練習「ライブBP」に登板した。メジャー契約の2選手を含む打者4人に対して計30球を投げ、被安打2、空振り4。登板後には、「力み」に対する独自の“理論”を明かした。

 バッテリー組のキャンプインから8日目、菊池は打者を相手にした投球練習(ライブBP)に初登板。直球、スライダー、カーブ、チェンジアップの全球種を投げ、制球を反省点に挙げる一方で「最初にしては悪くないかなと思う」との自己評を口にした。

 4人の打者に計30球を投じた菊池。捕手のサインに首を振る場面が何度かあったが、ルーキーでも遠慮を嫌い、メインテーマの「直球の確認」にブレはなかった。最速92マイル(約148キロ)を出し、4つの空振りを取るなど「差し込めてるボールも何球かあり、そういう精度を高めていけばいいものになっていくと思う」と手応えは上々だ。

 この日はボールの交換を要求する場面が2度あった。日本のボールとは違いメジャーの使用球は皮を縫い合わせた部分に隙間がある。それが縫い目の山を「低く」感じさせると菊池は言う。しっくりとくる指の掛け方を模索する中で、個々のボールの出来具合が不揃いなのも改めて実感したマウンド。ただ、こんな感触も得ている。

「まだまだ抜けてしまうボールがある。修正が必要。でも真っ直ぐが思いのほかいいボールが行っていたので、自然とスライダーが真っ直ぐと一緒に上がってくると思う」

「力むのは別に悪いことではない」、その理由は…

「投球の7割を占める」とするもう一つの球、スライダーの調整にも重きを置いたマウンドで、菊池が密かに実行したのが「力むこと」ではなかったか――。

 捕手の後ろに置かれたネットの裏にはサービス監督ら首脳陣の目があった。アピールする意識は当然生まれる。「最初は力んだりボールがシュートしていた」と菊池。だが、その「力み」を菊池はこう噛み砕いている。

「力むのは別に悪いことではないと思う。そのタイミング。ちょっと力むのが早くて、一瞬(力の入れ具合が)早いとボールはそのままの軌道で行ってしまう。いい体の使い方をした中で力を入れることができてくればいいボールも行くのかなと思う」

 勝負を分かつ場面では、渾身の力を込めた一投が修羅場を切り抜ける最善の策となることもある。菊池の紡ぐ言葉には余韻が残った。

 球威、制球、軌道……。30球の調整に注がれた周囲の目線の裏で、27歳左腕はしたたかにもう一つの確認事項を消化していた。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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