ペットの遺骨 真珠に 五島・奈留で「真珠葬」 化粧品開発会社、養殖業者、長崎大教授と共同

 愛犬などを失った喪失感「ペットロス」を抱える飼い主を癒やそうと、五島市の奈留島で、「真珠葬」と名付けられた新事業が始まった。樹脂で包んだ遺骨をアコヤガイに入れて真珠を作り、ペットを弔う全国でも珍しい手法。近年、多様なペット関連事業が生み出される中、五島の豊かな海を生かした新たな取り組みとして注目されそうだ。
 化粧品開発などを手掛ける「ウービィー」(東京、増田智江代表)と「多賀真珠」(同市奈留町、清水多賀夫代表)、長崎大大学院水産・環境科学総合研究科の松下吉樹教授(水産学)の3者が共同で開発した。国境離島新法に基づく本年度の雇用機会拡充支援事業に採択されている。
 研究が始まったのは2年前。愛犬を失った松下教授が奈留島を訪れた際、清水代表に「犬の遺骨で真珠が作れないか」と持ち掛けたのがきっかけ。その場に増田代表も居合わせ、連携して事業化を目指すことになったという。
 当初は遺骨のままアコヤガイに入れたが、骨の形がふぞろいで貝の身を傷つけたり貝が骨を吐き出したりして、真珠になる確率が低かった。そこで通常用いる核と同じ球体に近づけるため、遺骨を樹脂でコーティングする技術を開発。松下教授の助言で個体識別用のICチップも樹脂に埋め込み、読み取り機器を使えばどのペットの遺骨か確認できるようにした。
 真珠葬は、犬や猫などの動物全般が対象。8ミリ以下の遺骨を8個預かり、1年~1年半かけて多賀真珠の養殖場で10ミリ前後の真珠に育てる。自然環境などにより真珠化されなかった遺骨は返却する。核入れや定期的に清掃する様子などは、写真や動画で撮影しメールやLINE(ライン)で飼い主に配信。最後は写真集やDVDにして、完成した真珠と共に飼い主に渡す。一連の費用は45万円。核入れの作業は夏と秋の年2回で、夏季の受け付けは来月から始める。
 増田代表は「完成まで時間はかかるが、時々奈留島を訪れて貝の清掃などに参加し、美しい自然の中で心を癒やしてほしい」と話した。

樹脂で覆ったペットの遺骨(右)と、核にしてアコヤガイの中で育てた真珠(左)
「多賀真珠」の養殖施設で、これまでの研究や開発の経過を振り返る(左から)増田代表、清水代表、松下教授=五島市奈留町

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