駅名は単純明快がいい

建設が進む高輪ゲートウェイ駅。線路の付け替え工事も進む

 JR山手線と京浜東北線の品川―田町間に建設中の新駅の名が「高輪ゲートウェイ」に決まった。周辺の再開発には時間がかかるが、東京五輪に間に合うよう、駅は来春に暫定開業する。

 JR東日本は、公募で一番多かった「高輪」を参考にしたというものの、ターミナル駅でもないのにわざわざ玄関口を意味する「ゲートウェイ」を付加したことについては、事業者としての意欲は感じられるが賛否評価は分かれるところだろう。

 鉄道の駅名は、立地する地名から付けられるのが一般的で、付近にランドマークとなる施設、寺社、学校などがあればその名称を借りることもある。ただ、一度名付けてしまえば地域を代表する目印であり、利用する住民らの愛着も沸くから簡単に変えるわけにはいかない。

 東急東横線の「都立大学」「学芸大学」などがいい例で、学校が移転してしまった後も駅名は残っている。付近のマンションなどには「○○都立大」などと表記した物件も多く、不動産業界的には立派なブランド名となっている。駅名とはそれぐらい重く責任のあるものだ。

 では高輪ゲートウェイはどうだろう。使い始めれば慣れるかもしれないが、どうもバランスが悪い。山手線内回りで目黒、五反田、大崎、品川とリズムよく乗ってきて、次は高輪ゲートウェイ。そして、田町、浜松町、新橋…と。やっぱり浮いてしまいませんか、高輪だけで十分じゃないですか、と思う。

 最近は英語でも案内が必要だから、海外からの旅行客はTakanawa-Gatewayと聞いてどう感じるだろうか。駅の乗客ランキングなどの統計でも、一駅だけ8文字も使うのは見栄えが悪い。券売機や電車内に掲げる路線図でも駅名のスペースに困るだろう。首都圏の他社も事情は同じだから「高輪G」なんて表記が生まれるかもしれない。

 京急電鉄が同じく来春、4つの駅名を変更すると発表した。いずれもこれまで長年慣れ親しまれた駅名だが、「創立120周年記念事業として、沿線地域の活性化につなげることを目的に」改称するそうだ。

「京急東神奈川」に変更される仲木戸駅とJR東神奈川駅は至近距離だ

 たとえばその一つ、横浜から上り品川方面に2駅目の「仲木戸」は、「京急東神奈川」となる。旧東海道神奈川宿に近く、仲木戸の地名は将軍が泊まった御殿を囲む木戸に由来するとのことだが、JR京浜東北、横浜線の東神奈川駅とは100メートル足らずのデッキで結ばれており、乗換駅としての役割を強調する効果がありそうだ。ほかの駅名が変更される3駅も、総じて広く利便性を重視した変更と考えていいだろう。

 実は今回の京急の駅名変更については、事前に沿線の小中学生を対象にした公募が案内され、伝統ある地名を大切にしたいと考える人たちからは懸念の声が上がっていた。品川駅の南にある「北品川」(地名が北品川)がいよいよ変更されるか、などの下馬評も呼んだが、結果的には変なきらきらネームにならず、ほっとした。

 駅名をめぐっては、地元で争いを避けるためもあって、安易な地名の結合や、新○○、東西南北を付けた駅名もあふれている。知恵を絞って後世に残すにふさわしい単純明快な名称を付けたいものだ。

☆共同通信・篠原啓一

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