旅人の敷いた道

 砂嵐を浴びて昨年6月から休眠状態になり、とうとう復旧しなかったという。火星で岩石などを分析してきた米国の無人探査車「オポチュニティー」が15年にわたる活動を終えたと、先ごろ発表された▲米航空宇宙局(NASA)は「将来、人類が火星に降り立つときのための先駆者」とたたえている。ただ一人、黙々と物事に打ち込む人の姿を思わせるためか、宇宙で活動する探査機の類いは、よく人に例えられる。「先駆者」も普通は人にしか用いない▲エンジンは故障し、通信は途絶え、それでも7年をかけて地球に戻った探査機「はやぶさ」は、その忘れがたい例だろう。2010年、大気圏に突入後、小惑星の微粒子をカプセルに残して本体は燃え尽きた。最後の力を振り絞るように見えて、目を潤ませた人も少なくあるまい▲はやぶさで続いた不具合を改良した結果、後継機は打ち上げから4年余り、ほぼ順調に旅をしてきたという。「はやぶさ2」が地球から3億4千万キロのかなたにある小惑星への着陸に成功した▲岩石のサンプルを持ち帰り、太陽系誕生の謎の解明を目指す。どんな謎が解き明かされるのか、てんで分からないが、とてつもない成果が期待されているのは分かる▲今また、人に例えて思う。苦難の旅人「はやぶさ」が敷いた道の先に光あり、と。(徹)

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