TCR:2019年のBoP策定が大詰め。トラックテストに新規ホモロゲ車種5台が集結

 2019年シーズンに向けたTCR規定ツーリングカー用のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)テストが最終段階を迎え、今季から変更されたテスト方法にしたがってスペイン・バレンシアのサーキット・リカルド・トルモに全5台の新規ホモロゲーション取得モデルが集結。性能調整のベースとなる各数値の計測と算出が行われた。

 1月末から開始された2019年向けBoPの各テストは、イタリアの著名な自動車工房ピニンファリーナの風洞設備を使用したエアロテストを皮切りに、元フェラーリの技術者でランボルギーニのF1活動にも携わったマウロ・フォルギエリが参画するORALエンジニアリングでのエンジン性能計測を終え、TCR規定車両を開発する全マニュファクチャラーの静的テストによる数値測定が完了した。

 従来のサーキット・テストでは全モデルが一堂に会してのトラック走行が実施されていたが、今季からはそれを改め新規ホモロゲーションを取得するモデルのみ参加が義務付けられる格好に。

 2019年に向けてはヒュンダイ・ヴェロスター N TCR、Link&Co 03 TCR、アルファロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCR、ラーダ・ベスタ・スポーツTCR、そしてルノー・メガーヌR.S. TCRの5車種が対象となり、2月17~18日のバレンシア最終テストに集うこととなった。

 この日のテストにはFIAのテクニカルデリゲートから、ETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップ出身のカルロス・バロスや、TCRを運営するWSC Ltd.からのテクニカルスタッフらが派遣され、ドライブを担当するテスターには昨年に引き続きTCR UKで初代タイトルホルダーとなったダン・ロイドが招聘された。

 新規ホモロゲーション取得車両の5台に加え、当日は基準車両としてセアト・クプラTCRを加えた6台がトラックを走行。各マシンは2018年最終版のBoPテーブルに従ったセットでテストを開始し、マシン重量、最低地上高を変更しながら周回を重ねた。

「昨シーズンの後半戦はBoPのバランスが非常に良い状況となっていたので、今回我々はその基準を適用して2019年のBoPテストを開始すると決めたんだ」と説明するのは、TCR技術部長であるアンドレアス・ベル。

「今回のトラックテストを含め、ここまでの風洞、ダイナモ、サーキットの3ステージで収集したすべてのデータを使用し、我々はこれから“ジグソーパズル”のようにBoP性能調整の最終バランスを決定する作業を進めることになる」

 また昨季のテストではジャンニ・モルビデリとともにテスターに任命されながら、初日にマシン不具合でモルビデリがクラッシュ負傷のアクシデントで去り、すべてのTCR規定車両を単独でテストする役割を担ったロイドは「こうして再びTCRのテスターに起用され、公式BoPテストに参加できたことを誇りに思う」と語った。

FIAテクニカルデリゲートやTCR技術部門、そして各カスタマーレーシングのスタッフがBoPテストに臨んだ
2019年にWTCRデビューが予定される完全ブランニューモデルの『Link&Co 03 TCR』
こちらも新型モデルの『ヒュンダイ・ヴェロスター N TCR』は、北米ブライアン・ハータ・オートスポートが最初のカスタマーとなる
TCRロシアなどで活躍する『ラーダ・ベスタ・スポーツTCR』はEVOモデルを新規ホモロゲ

「つまり、僕はそれだけ去年のBoPテストで良い仕事をしたということだからね。今季はテスト参加車種が減ったけれど、それでも多くの走行時間とやるべき仕事があった」と、新方式のテストを振り返ったロイド。

「各車種の間にはとても大きな隔たりがあって、バランスもハンドリングもまるで異なっていたから簡単な仕事ではなかったよ。それぞれに対して短い時間のなかで可能な限り最善のフィードバックを見つけ出さなくてはならなかった」

 一方、昨季のBoPテストでアクシデントの起因となっていたメガーヌR.S. TCRは、2019年に向け大幅なアップデートを施したEVOモデルを開発。このBoPテストで公式にお披露目を迎えた。

 ルノースポールからオフィシャルパートナー兼正規販売代理店としてのサポートを受ける形で、スイスのブコビッチ・モータースポーツが製作したこの新型モデルは、2018年シーズンはTCRドイツやUKシリーズなどでのテスト参戦を経て、このBoPテストで2019年型として初のトラックテスト実現となった。

「こうして今日という日を迎えられ、とても晴れ晴れとした気分だ。引き続きルノースポールとともに働けることにもワクワクしている。この新型メガーヌは各TCR選手権で最前列を争えるポテンシャルがあると信じているし、近日中にも我々自身の2019年プログラムが発表できるはずだ」と語るのは、同社代表のミレンコ・ブコビッチ。

 昨季8月にデビューしたメガーヌR.S. TCRは、この2019年型に向けサスペンション、エンジン、空力などすべての主要分野でアップデートが実施されている。

「このメガーヌR.S.は過去6カ月の間に多くの分野で再設計が施された。フロントとリヤのサスペンションはトランスミッションと同じようにファインチューンされ、エアロダイナミクスは抜本的に見直されている。そして新型エンジンはマッピング、燃料噴射および冷却システムが完全に新しいものに更新されている」と説明するブコビッチ代表。

 これらすべてのテスト結果を踏まえた2019年最初のBoPテーブルは3月上旬に発表される予定で、TCR規定最高峰シリーズのWTCR世界ツーリングカー・カップを筆頭にすべてのカテゴリーで採用される。

 その後は、トラック上のパフォーマンスや各シリーズのレギュレーションに従って、シーズンを追うごとにサクセスバラスト(コンペンセイション・ウエイト)やブースト圧調整などが、各選手権規則によって追加されていくことになる。

昨年に引き続き、今季もTCRシリーズのBoP公式テスターを務めたダン・ロイド
ルノースポールの支援を受ける『ルノー・メガーヌR.S. TCR』にも大掛かりな改良が実施された
WTCRにも参戦するロメオ・フェラーリ製マシンは『アルファロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCR』に登録名も変更された
すべてのテスト結果を踏まえた2019年最初のBoPテーブルは3月上旬に発表される予定だ

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