独創的な世界楽しむ 藤沢市アートスペース「点と線の宇宙」展

 光や山、星などの自然を線や点を独創的に用いて表現する現代美術家3人を紹介する「点と線の宇宙」展が、藤沢市アートスペース(藤沢市辻堂神台)で開催中だ。三者三様の独創的な世界を堪能できる。

 光を通した色の変化を表現するのは、小田原市在住の石川美奈子(44)だ。透明なアクリル板に、透明度を増したアクリル絵の具で細い線を何百本も引き、さまざまな色のグラデーションを表現する。

 石川は、300色もの繊細なグラデーションで虹を表した作品について「空気の中の光をスペクトルに分けて、少しずつ糸のように紡ぎ出す意識」と説明する。

 半円から始まって、同心円を描く細い線は、次第に直線に近づいていく。

 「水平線は果たして水平なのか」と意識して生まれたのが、青の微妙な変化が美しい「水門」だ。地上と天空を行き来する水の循環を、青い線で描いた。

 「水平線も地平線も、実際に線が存在するわけではない。人の意識としてある線は、地上のあらゆるところで起こる社会問題上の見えない線に通じる。作品に表現しきれていないかもしれないが、目に見えない意識の地平線を表現したい」と話した。

 鎌倉市在住の今村洋平(40)はシルクスクリーン版画によって、版画とは思えない立体的な作品を手掛ける。等高線を重ねた起伏のある山やカラフルに彩られた幾何学模様は、小さな点を数千回も刷り重ねたインクが何センチもの高さに堆積したものだ。

 新作の「atlas」は会場内に刷り台を設置し、会期中も制作を続ける。完成品は、今年夏に行われる「あいちトリエンナーレ2019」に出品する予定。

 「新雪の上に足跡を付けて、ルートを自分で開拓しながら山を登っていく。そんな様子をイメージした」と今村。実際に作品に取り掛かる前には、山に登って集中力を高めるという。

 「インクの物質感に興味があった。シルクスクリーンだからこそ、こうした緻密な表現ができる」

 版を重ねる際のインクの種類や刷った回数なども細かく記録し、日々変化する様子を楽しんでいる。

 身の回りの物を宇宙に見立てた作品に取り組むのは、秦野市出身の渡辺望(34)。星が瞬く天体写真に見えるのは、アスファルト道路に吐き捨てられたガム。丹沢の山並みと満天の星空が原風景にあるといい、視点をずらすことで生まれる豊かな世界を示す。

3月21日まで。月曜休館。入場無料。問い合わせは藤沢市アートスペース電話0466(30)1816。

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