『移動都市/モータル・エンジン』 宮崎アニメの実写版を観ている感覚に

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 フィリップ・リーヴの小説『移動都市』を原作に、『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソンが製作と脚本を担当したSF冒険アクションだ。監督は、ジャクソンの右腕で『キング・コング』でアカデミー視覚効果賞を受賞したクリスチャン・リヴァーズが務めている。

 舞台は、最終戦争で文明が荒廃した未来。小さな都市を捕食して巨大化を続ける移動都市の指導者は、その野心からある計画を企てていた。主人公は、彼に母親を殺されて復讐に燃える少女だ。そして、彼女のために頑張る男の子や、巨神兵を思わせる最終兵器&人造人間、飛行船や空中都市まで登場する。つまり『風の谷のナウシカ』×『天空の城ラピュタ』×『ハウルの動く城』。あたかも宮崎アニメの実写版を観ているかのような感覚に陥る。面白くないはずがない。

 実際に監督自身も宮崎駿の影響を口にしているが、考えてみると宮崎駿は逆に西洋の影響を色濃く受けたアニメ作家だ。イギリスの小説が原作のハウルはもちろん、ナウシカもラピュタもデザインや世界観は西洋のそれ。だから、彼が学んだ西洋的なものが一周回って西洋に戻った作品と言えるかもしれない。ただし、少しだけ残念なのは、宮崎アニメの重要な特徴である“上下の空間表現”があまり取り入れられていないこと。これだって、宮崎がフランスのアニメ『王と鳥』(やぶにらみの暴君)から学んだものだから。★★★★☆(外山真也)

監督:クリスチャン・リヴァーズ

出演:ヘラ・ヒルマー、ロバート・シーアン、ヒューゴ・ウィーヴィング

3月1日(金)から全国公開

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