僧侶3人が葬儀社 葉山町、簡略化に危機感

 葉山町長柄にある、ともに高野山真言宗の仙光院と長運寺の僧侶3人が、寺院葬祭社を設立した。葬儀の簡略化に危機感を抱き、「心を込めて故人を見送りたい」と知恵を絞った。寺院で執り行うため、相場より価格を抑えられるほか、住職らが直接、相談に応じ、遺族の要望に柔軟に対応する。3人は「後悔のない、心からの供養ができるよう、寄り添いたい」と話している。

 昨年3月に合同会社「NEN(ねん)」を立ち上げたのは、仙光院副住職の成井秀仁さん(41)と弟の阿里さん(36)、長運寺住職の遠藤陽仁さん(38)。成井さんが代表を務める。

 成井さんと遠藤さんは10年ほど前、高野山での修行で出会い、以来、親交を深めてきた。その中で2人が宗教家として、ともに懸念していたのが、近年の葬儀の在り方だった。

 高齢化に伴い、斎場では1日に何件もの一般葬が執り行われ、読経を1時間から40分に短縮するよう求められる。2人の目には「効率化や時間短縮に重きを置いている」と映った。また近年は高額な費用などを理由に、火葬だけで済ませる「直葬」も増えている。

 本来、葬儀は故人を悼み、ゆっくりと最期のお別れをするためのもの。「亡くなった方にとって、たった一度の葬式がこれで本当に良いのだろうかと危機感を感じた」と成井さん。遠藤さんが2年ほど前、仙光院の近くの長運寺住職に就いたことを機に、寺院だからこそできる葬儀を実現させようと、同じ思いの阿里さんも加わって寺院葬祭社を設立した。

 料金プランは布施や戒名料なども含め、4種類を用意。斎場や祭壇などの費用が要らないため、一般葬で98万円、参列者15人ほどの「家族葬」で88万円など低価格に設定した。

 3人が何より大切にするのは「心のこもったお見送り」だ。住職らが式に関する相談に乗り、例えば参列者の都合に合わせて葬儀の時間を長くするなどの要望に柔軟に応える。

 ヒートショックで突然死した女性の葬式について、遺族と相談。「家族一緒に過ごしたい」との要望を受け、女性の遺体を5日間、自宅に安置した。遠藤さんは毎日、ドライアイスを交換し、手を合わせた。「息子さんたちは『久しぶりに母さんと添い寝したな』と笑っていた」と振り返り、「これからも大切な人をしっかり見送るための一助になれたら」と話した。

 問い合わせは、同社電話0120(55)7694。

寺院葬祭社を設立した成井秀仁さん(中央)、遠藤陽仁さん(右)、成井阿里さん(左)=葉山町長柄

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