【平成の長崎】国境離島新法施行 「しま」祝福ムード 平成29(2017)年

 長崎県などの国境に接する離島の人口維持や保全を目的とした国境離島新法は4月1日施行した。島民を原則対象に航路運賃がJR並み、空路運賃が新幹線並みにそれぞれ引き下げられ、各島でセレモニーが行われるなど祝福ムードが広がった。

 今後は、人口減少を防ぐ雇用創出や交流人口拡大につなげる滞在型観光をいかに推進するかが焦点。行政や関係団体による施策遂行にスピード感や具体性が求められる。

 新法は、国境に近い島を有人国境離島地域と定義。領海や排他的経済水域(EEZ)の保全の拠点と位置付け、国の責任で維持に必要な施策を実施する。航路距離が50キロを超え、人口がピーク時より4割以上減った所を特定地域とし、本県の「対馬」「壱岐島」「五島列島」の3地域計40島をはじめ、8都道県15地域計71島を指定した。

 運賃値下げは、同法に基づく国の交付金を活用し、本県関係の海路は22航路123区間を対象に最大65%近く、空路も5路線で最大4割近く安くなった。島外へ運ぶ農水産物23品目や、島外から仕入れる原材料の一部も補助対象になり、事業者には最大8割の輸送コスト削減のメリットが生まれた。

 雇用創出を条件に創業なら最大450万円、事業拡大なら最大1200万円を補助。設備投資費や人件費などに充てられる。島産品ブランド化などを目指す「地域商社」も関係4市町で始動する見込み。

 新法制定に尽力した自民党離島振興特別委員長の谷川弥一衆院議員=長崎3区=は「島民に喜ばれるのは良いことだが道半ば。一番重要な働く場づくりに向け県や市町は言葉だけじゃなく具体的な行動を」と指摘。特産物をどう売り込むか地域商社の戦略を早期に具現化するよう求め、釣り場整備、廃校・空き家改修など人を呼び込む仕掛けづくりも提言。割引運賃を島外からの観光客らにも適用できるよう「今後も努力する」と語った。
(平成29年4月2日付長崎新聞より)
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【平成の長崎】は長崎県内の平成30年間を写真で振り返る特別企画です。

国境離島新法施行を祝い、ジェットフォイルの乗船客を見送る関係者ら=五島市、福江港

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