平祐奈が作品への熱い思いを語る!「女川 いのちの坂道」で震災を体験した少女役

平祐奈が作品への熱い思いを語る!「女川 いのちの坂道」で震災を体験した少女役

NHK BSプレミアムでは、3月9日に平祐奈さん主演のドラマ「女川 いのちの坂道」を放送します。このドラマは2011年3月11日に発生した東日本大震災で甚大な被害に見舞われた宮城・女川町が舞台。海岸線や坂道の起伏が多い女川の地形を効果的に映像化するため、全編4Kドローンカメラで撮影しました。当時小学校卒業間近で被災した子どもたちが中学1年生の時に立ち上げたという、女川町にある21カ所の浜すべてに石碑を建てていく「女川 1000年後の命を守る会」の活動は今年成人式を迎えた今も続いています。このドラマは、それを基に復興半ばの街と20歳の若者たちの歩みをフィクションとして“ロードムービー”タッチで描いた物語です。

昨年11月に20歳を迎えた、主演を務める咲(サク)役の平さん。同じ年の子がモデルで思い入れが強かったという今作品の撮影時の様子などをじっくりと伺いました。

──出演が決まった時の率直な感想をお聞かせください。

「咲は自分と同じ20歳を迎える女の子です。家族のことなどいろいろ複雑で重いなと思い、私にできるのかなという不安はありました。でもメッセージがたくさん台本の中に詰まっていたので、ちゃんとこれを伝える気持ちでできたらいいなと思いました」

──実際に活動しているメンバーの方とはお会いしましたか。

「撮影現場に来てくださって、お会いできたのは短い時間でしたが活動にあたっての話をしてくれましたね」

──現在建てられている石碑はいくつか見られましたか。また、石碑に掘られている俳句も全部違いますが、実際に見ると被災した人たちの思いがより伝わったのではないでしょうか。

「石碑は撮影で3カ所行きました。(俳句は)一句一句重みがあるし、経験したからこそ出てくる言葉なんだろうな、というのはすごく感じました。そしてみんな頭が良いなと思います。石碑活動のことを中学生の時に考えたり、俳句も限られた文字の中でちゃんと考えたり…。私にはこんなこと思いつかないなっていうことがすごくあるので想像力が豊かで素晴らしいと思います」

──この作品に参加するにあたり、あらためて勉強したことはありますか。

「当時は小学6年生で、東京にいたのですが揺れは感じていてテレビも全部震災ニュースに切り替わったり大変な状況は目の当たりにしていたのですごく鮮明に覚えています。実際周りに震災を経験した同い年くらいの女の子がいるので『あの時どうだったの?』と話を聞いたり、動画の検索をしました。セリフだけどちゃんと自分が言っているように『このセリフの時はこの映像を思い浮かべる』ということを考えながら動画を見ていました」

──咲の彼氏やお父さん、お母さんが命を懸けて助けたおばあさんなどそれぞれが複雑な思いを抱えていてセリフも一人一人重みがあり心に刺さる言葉が沢山ありました。平さんが一番印象に残っているのはどんなシーンでしょうか。

「咲が海を眺めていて『この海、なんもなかったような顔してむかつく』というセリフはすごく印象に残っていますね。海はいつも『きれい』というふうにしか見ていないのであんな一瞬で全部飲み込んでしまって…。咲は実際にそれを経験しているので『そりゃ、むかつくよなー』て。でも海だからどうしようもないし…複雑な思いでした」

──そんな中、平さんが小学校の前の坂道で歌うシーンがかわいらしくてほっこりできる場面もあります。あれは校歌ですか?

「『学校の坂道』というタイトルの元々ある歌です」

実際に小学生たちがその歌を歌いながら坂を上っていたそうで、ぜひ平さんにも歌ってもらおう、とそのシーンができたのだそうです。

──今作品はドローンならではのアングルで町が映し出されています。整備されている所とされていない所の差を感じましたが、現地に行ってどんな気持ちになりましたか。

「駅はきれいに整備されて、でもどこか寂しい感じもして…。残すか残さないか賛否両論あった旧女川交番を見たりもしました。私はまだ真っ暗な朝、咲がここを生きていたんだと思いながら女川の町を走ったんですよ。そしたら自分でも不思議だったんですけど震災に遭った方たちの情景がぱっと浮かんできて少し怖くなったんですね。そして、その人たちの思いをちゃんと作品にぶつけたいな、と初日の朝4時に思いました」

──ドローン撮影では、通常の撮影と比べて難しかったことや印象に残ったことがあればお聞かせください。

「本当に全部ドローンで撮っていたので音はすごかったです。でも芝居的には1シーンごとにカットなしで最初から一連の流れで撮るので、ずっとその気持ちを保つことができたので感情的にはすごくありがたかったです。始まる前は『音とか気になったり大変だと思いますけど』て言われていましたが、いざ本番となると音もまったく気にならなくて大変なことはなかったです。逆に『ドローンていいかも!』て思ったぐらいです」

──ドローンが気に入ったのですね!(笑)。

「はい! ドローンだからこそ撮れる上からの景色とか角度とかもあるので、これから全部ドローンで撮りたいなーって思うくらい、いいなって思いました!」

──ドラマの中で、咲の思い出の場所でのダンスシーンがありますが、どんなことを感じながら踊りましたか。

「監督が当時の状況を細かく教えてくれたのでイメージしやすく、ダンスの先生が台本に合わせて踊りを作ってくださいました。コンテンポラリーダンスは初めてだったんですけど、心の底の気持ちとか表情とかが大事なので、全部お母さんに捧げる気持ちで踊りました」

──初めてとは思えないくらいダイナミックなダンスで、とても良い表情で踊られていましたよね。すてきでした!

「ありがとうございます。そう言っていただけるとうれしいです」

──それでは最後に、視聴者へメッセージを。

「女川を舞台にして、命の大切さや身近な人がいつも一緒にいて当たり前だから忘れがちなことを、忘れちゃいけないということ(を伝えたい)。そして個性豊かな役者さんがすごくいい味のお芝居をしていてすてきな表情や言葉が詰まっています。どの世代の方でも共感してもらえると思いますし、日本人としては(震災を)忘れてほしくない。ちゃんと関心を向けてほしいのでどんどん言い伝えられたらいいなと思うので、一人でも多くの方にご覧いただきたいと思います。あとは4Kドローンですごくきれいに映っているので女川の景色など細かい所までしっかり見てほしいです!」

平さんは澄んだ瞳の中に力強さを感じるまなざしで、言葉を選びながら慎重に、時に笑顔を見せながらしっかりとした言葉でインタビューに答えてくれました。

この作品を通してあらためて自然災害の恐ろしさを感じ、人とのつながりの大切さをかみ締めることができます。そして、つらいことから目をそむけず真正面から立ち向かう勇気を持つことも教えてくれる平さんの迫真の演技に注目です!

余談ですが、筆者のフルネームが平さんと酷似しており名前トークで大盛り上がり! 少しだけ緊張をほぐすことができ、自分の名前に初めて感謝しました(笑)。

【プロフィール】


平祐奈(たいら ゆうな)
1998年11月12日生まれ。兵庫県出身。小学6年生で女優デビューしてから多数のドラマ、映画で活躍中。現在公開中の映画「凜‐りん‐」に出演。2019年以降に公開を控えている「10万分の1」にも出演している。写真集「Comme le Soleil」、「平祐奈CALENDAR 2019.04-2020.03」も好評発売中。

【番組情報】


ドラマ「女川 いのちの坂道」
NHK BSプレミアム
3月9日 午後10:00~11:00
(NHK BS4Kは、3月3日 午後8:45~9:55)

取材・文/平良由羽(NHK担当) 撮影/中越春樹

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