常勝ソフトバンクの課題…若手野手は宮崎での28日間でアピールできたのか?

成長が期待されるソフトバンク・周東佑京【写真:福谷佑介】

工藤監督、アピール不足の若手に奮起促す「チャンスはそうそうない。打つ、打たないよりゲームに入って振れるか」

 3年連続日本一を目指す王者ソフトバンク。昨季はパ・リーグ2位に終わったものの、クライマックスシリーズ、日本シリーズと勝ち上がり2年連続の頂点に立った。2019年のペナント奪還は至上命令。工藤公康監督はじめ首脳陣、そして選手たちも、もちろんそのつもりで春のキャンプを過ごしていた。

 例年通りソフトバンクは2月1日から宮崎・生目の杜運動公園でキャンプを張った。第1クール、第2クールにはいつも以上にランニングメニューに時間を費やし、体力強化に勤しんだ。キャンプは25日で打ち上げたものの、そのまま宮崎に滞在。28日までは「球春みやざきベースボールゲームズ」で楽天、西武、ロッテと3試合を戦った。

 この3試合は3連敗。この時期の結果にはさして意味はなく、工藤監督にも意に介す様子は一切なかった。とはいえ、特に気になったのは3戦目、28日に行われたロッテ戦だ。この日、ソフトバンクは柳田や内川、松田といった主力の多くは欠場。28日間の疲れを癒すために、早く帰福できるようにとの措置だった。スターティングラインナップには開幕1軍やレギュラー獲りを狙う面々が多く名を連ね、途中からは次代を担うべき若手たちも試合に出場した。

 この日の結果は0-2で敗戦。打線は1点も奪えず、マルチ安打と気を吐きアピールしたのは昨季広島からトレードで加入した美間だけ。主力の出場しない中で、若い選手たちにとっては絶好のアピールの場となるはずが、特段、光り輝く選手がいなかったのは、正直、残念だった。

 ロッテ戦後に工藤公康監督はこう語った。

「1試合ではなかなか難しいでしょうけど…。チャンスはそうそうない。そういうときに度胸を持って振っていかないといけないところはある。打つ打たないよりも、ゲームに入って振れるか、振れないかというところを我々は見ている。次に期待したいと思います」

この言葉を聞いた限り、指揮官も若手たちのプレーに満足感は示してはいなかった。

主力の内川、松田、柳田は30代…後継者出てこい 34歳長谷川「若手に負けるなんて全く思ってない」

 ソフトバンクにとって、若手野手の台頭は積年の課題だ。内川は今年37歳、松田は36歳になる。柳田も30歳を超え、チームの年齢層は着実に上がってきている。上林がレギュラーの座を掴んだものの、今、チームが最優先で求めているのは内川や松田の後継者となるべき選手。このキャンプで、その候補となりそうな選手が果たしていただろうか?

 確かに初戦で3塁打、2戦目で本塁打を放った真砂や、育成選手の周東のように、ある程度の結果を残した選手はいた。だが、予想以上のインパクトを残したかといえば、そうではないだろう。どちらかといえば、目についたのは、例年通り、主力選手たちの意識の高さ、練習量の多さだった。

 ソフトバンクは12球団でも屈指の戦力を誇る。球界最高の打者に上り詰めた柳田を筆頭に、内川や松田といった実績者、中村晃や今宮、上林といった実力者が名を連ねる。先にも記したように、このチームの中核を担う選手たちの、野球へ取り組む意識や姿勢には目を見張るものがある。

 となると、若手がちょっとばかり結果を残しただけ、ちょっとアピールしただけで、その座を奪うことは不可能だ。主力選手たちを凌駕するだけの意識、練習量、そして貪欲な姿勢が必要不可欠なのだが、それだけのものを見せた若手がいたとは言い難い。

 ベテランの長谷川勇也はオフの契約更改後の会見で「意識の高い選手がいない。何のためにプロに入ってきたのか、何のためにユニフォームを着ているのか、伝わるものがなかった。年齢を重ねて後輩の見方が変わってきたところもあるが、だから負けちゃいけないし、負けるわけがないとも思っている。それは松田選手や内川選手にしても同じ。みんな、若い選手に負けるなんて全く思っていない」と語っていた。その長谷川勇はB組スタートとなったキャンプ中、毎日のようにティー打撃やマシン打撃に没頭し、凄まじい数のバットを振っていた。この長谷川勇を唸らせることはできたか。

 立花義家1軍打撃コーチは言う。

「もっと追いついていかないといけない。もっと意識を高く持ってやらいないといけない。若い選手たちも間違いなく良くなっている。でも、主力の選手たちと同じじゃいけない。もっと意識を持って、もっと自分の特徴をどうすれば出せるか、生かせるかを考えて欲しい」

 3月2日からオープン戦がスタートする。開幕まで残り1か月弱。頭角を表す若手の出現に、期待したい。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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