ロシア元上院議長、北方領土改名提案へ 「『ハボマイ』は日本語名」主張

By 太田清

北海道・根室沖から望む北方四島。歯舞群島(中央)、色丹島(右上)、国後島(左奥)が広がり、はるか右奥にはうっすらと択捉島が見える=1月30日(共同通信社機から)

 2011年までロシアの上院議長を務め、現在は下院第4勢力の左派系政党「公正ロシア」党首を務めるセルゲイ・ミロノフ氏は2月28日放送の国営ニュース専門テレビ「ロシア24」で、北方領土(ロシア語名南クリール諸島)について「過去も現在も将来もロシアの領土である」と主張、同党が名称を「ロシア諸島」に改名する提案を行う考えを明らかにした。 

 ミロノフ氏は特にロシア語でも「ハボマイ」と呼ぶ歯舞群島について改名の必要性を強調。その理由として「歴史的にイトゥルプ(択捉島)、シコタン(色丹島)はアイヌ語由来の名称だが、ハボマイ(歯舞群島)は日本語の地名だ。どうして我々の島に日本語の名前を使わなくてはならないのか」と述べた。 

 しかし、内閣府のホームページによると、北方四島の名称はいずれもアイヌ語由来で、歯舞については「名称の由来はアイヌ語で『流氷のある島』という意味」だ。ミロノフ氏が何を根拠に「日本語の地名」と主張しているのかは不明だ。 

 ミロノフ氏は北方領土は18世紀にロシアの探検隊がその存在を確認し、ロシア帝国領に編入しており、歴史的にもロシア領だと指摘。1956年の日ソ共同宣言で定められた平和条約締結後の色丹島、歯舞群島2島の引き渡しも拒否する考えを鮮明にした。また、歯舞群島について当時「緑の島」と名付けられたことから、同じ名前に変更する必要性を力説した。

 北方領土を巡っては、ロシアの極右政党、自由民主党所属の下院議員が、北方領土の日本への引き渡しを禁ずる法案を下院に提出するなど、議会内でも反対の声が強まっている。 

 公正ロシアは貧困対策や汚職取り締まりなど、いわゆる左派的な政策を主張する政党だが、議会ではプーチン政権の政策に賛同することも多く「体制内野党」と称される。ミロノフ氏は2004、12年の大統領選に出馬したが落選。18年の大統領選には「ロシア政界でプーチン氏に代わる価値ある人はおらず、彼は最良の候補」として自党から候補を擁立しなかった。 (共同通信=太田清)

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